みなさんは、緊張したことはありませんか。学校での自己紹介や発表、楽器を演奏するとき、部活や試合のとき、試験や面接など......。大事な場面でドキドキ、ブルブルしてしまうことはありませんか。今回は、緊張しやすい人に向けた指南書を紹介します。
「12歳から始めるあがらない技術」(鳥谷朝代 著)秀和システム
「あがり」は見た目ではわからない
あがっているか、あがっていないかは、じつは見た目ではよくわかりません。堂々と話しているように見えても、心臓はドキドキなんてこともあります。心臓のドキドキは目に見えないので、本当のところはわかりません。
「以前、こんなアンケートをおこなったことがあります。『あなたは、どんなときに緊張しますか?』。なんと95%の人が『おおぜいの前で話・スピーチをするとき、緊張しやすい』と答えました。95%ということは、1クラス40人だとすると、38人が『おおぜいの前で話・スピーチをするとき、緊張しやすい』と感じているということです」(鳥谷さん)
「これはもう、ほとんどクラス全員ですよね。みんな、本当はあがっているんだけど、そう見えないから、友だちや家族にもなかなか言い出しにくくなります。そうしているうちに、だれにも、なやみを話せなくて、自分ひとりだけで不安をかかえて、次第に気分もゆううつになっていきます」(同)
緊張度合いが強くなると、声がひっくり返ったり、手足がふるえたりすることもあります。じつは、あがりはトレーニングで克服することができます。鳥谷さんは、次のように言います。
「おおぜいの人前でなくても、あがることはあると思います。たとえば、テストの本番や、入学試験での面接、スポーツの試合なんかは、少人数でも緊張します。それらに共通するのは、『失敗しちゃいけない』『負けちゃいけない』っていう気持ちが生じることです。本番で失敗したとき、負けたときのことを想像するとこわくなります」(鳥谷さん)
「だから、本番に『必ず勝てる』という約束でもない限り、本番を前にすると不安になるのは、当たり前のことなのです。人前や本番に弱いことを、ほかの人とくらべるのは意味のないことです。『あの子はあがらないし、本番に強くていいな......』って思ったところで、あの子と体や頭をとっかえっこすることはできませんから」(同)
なぜ「12歳」からなのか?
著者の鳥谷さんは、中学1年生で、国語の授業で教科書を読んでいるときに、はじめて緊張を感じたそうです。先生に当てられて、ただ決まった文章を数行読むだけなのに、声がふるえて、息が 苦しくなってしまったのです。それ以来、人前で本を読むことがこわくなり、出席番号順で「今日あたりそうだな」とわかっているときは、仮病を使って、保健室ににげこむようになってしまいました。
本書のタイトルにある「12歳」にはどのような意味があるのか。じつは小学生でも読めることを意識して、このようなタイトルになったことが記されています。たしかに、あがり症や緊張しやすいことを意識するのは、中学1年生くらい。この時期に自覚できないと、人に対して苦手意識をもつ可能性がある、と鳥谷さんは指摘します。
対策を講じるなら、自覚したときがベターだということなのでしょう。ぜひ、お子様にも読ませてあげてください。思春期の、自我が芽生える時期だからこそ、大きな気づきがあるかもしれません。毎日の生活で無理なく実践していきましょう。
(尾藤克之)