路線廃止の協議は難航必至。「上下分離」で維持を決めた地域も
実際に路線廃止などに向けた協議は難航必至だ。
たとえば、もともと赤字路線だったうえに、20年7月の豪雨で被災し、総延長の7割にあたる86.8キロが運休したままの肥薩線について、JR九州は流出した2本の鉄橋などの復旧費用を235億円と見積もり、廃線を含めた検討が必要との立場だ。
一方、熊本県など地元自治体は、「SL人吉」など観光列車が人気だったことから、「廃線は地域の衰退に拍車をかける」と、鉄道としての復旧を求めている。3月に協議が始まり、「上下分離」案などが出ているが、話し合いは難航している。
すでにBRT(バス高速輸送システム)に切り替えた区間では、コストが鉄道の1~2割に抑えられ、「駅」の増加などプラス面はあるものの、所要時間が倍増するなどで利用が落ち込む例もあり、消極的な自治体が少なくない。
前向きに動き出したケースもある。
福島県と新潟県を結ぶ只見線は、2011年の豪雨で橋が流出するなどの被害を受け、JR東日本は当初、不通区間のバスへの切り替えも検討したものの、最終的に県が線路や駅舎を保有。そして、運航をJRが請け負う「上下分離」で維持することが決まり、2022年10月に全線で運航を再開する見通しだ。
また、JR富山港線(富山市)はLRT(次世代型路面電車)化し、経営主体も第三セクターに移し、利用を伸ばしている。
さらに、滋賀県は、利用者だけでなく地域全体で広く支えようと、「地域公共交通を支える税制」の検討を進めている。沿線住民以外からも税として広く資金を集め、「上下分離」などの手法で路線を維持しようというものだ。
過疎地ほど状況は厳しく、地元自治体の財政力も弱いだけに、こうした自治体の負担のあり方、そして、国とJRの支援を含め、路線ごとに最善の道を探っていくことになる。(ジャーナリスト 白井俊郎)