生活保護...受給者減ったが、受給世帯増えた「謎」 そして、申請件数「再増加」の危機(鷲尾香一)

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申請件数と保護開始世帯数、5月に2ケタ増に転じる

   いまや、生活保護の大きな問題は、年金だけでは生活できない高齢者世帯(とくに単身世帯)が増加の一途をたどっていることと、これまでは生活保護とは無縁だった人が、新型コロナの影響により、生活保護を受けなければならないほど、生活苦に陥っているという現実だ。

   さらに問題なのが、冒頭に述べたように、生活保護の申請件数の増加だ。新型コロナ感染拡大が始まった2020年1月以降、申請件数が前年同期比で減少したのは、2022年5月までの29か月で10か月しかない。

   また、生活保護は申請すれば、すべてが受理されて、保護が開始されるわけではない。審査により、ふるいにかけられる。したがって、申請件数が増加しても、必ず、保護開始世帯数が増加するわけではない。

   ところが、2020年1月の新型コロナ感染拡大以降、生活保護申請件数と保護開始世帯数の前年同月比はほとんど同様の動きをしている=表2

   これが意味するものは、新型コロナ対策として、政府が生活保護の受給要件を緩和したこともあるが、申請に対して、保護を開始しなければならない世帯が増加しているということだ。

   2022年に入って、1月から4月までの4か月間、申請件数と保護開始世帯数は前年同月比で減少を続けていた。ところが、5月に2ケタの増加に転じた。生活保護に頼らなければならない人が、再び増加していないことを願うばかりだ。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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