限られた予算で「新刊が少ししか入って来ない」
2020年度の貸出冊数の減少には、前述の通りに新型コロナの感染拡大の影響があるのは事実だ。だが、問題はそれだけではない。
筆者の妻は長年勤めた図書館を新型コロナで休館になったのを機に退職した。当時、妻がよく口にしたのが、「新刊を購入する予算が限られており、新刊が少ししか入って来ない」ということだった。
筆者も4年ほど前に、話題になった経済書を借りるため予約しようとすると、その本は1冊しかなく、75人待ちだったことを覚えている。
1人が図書館から1冊の本を借りられる期間は2週間だから、75人待ちということは、順番が回ってくるのに最大で150週かかるということだ。1年は52週だから、3年近く待たなければならない。 8000円を超える本だったが自腹で購入し、読み終わった後に妻の勤める図書館に寄贈した。
いくら図書館を増やしても、読みたい本、新刊本などがなければ、図書館に期待しなくなり、利用をやめることになる。それでは、利用者は増えないだろう。
この予算問題は「指定管理者の増加」という別の弊害も生んでいる。指定管理者制度とは、2003年9月に地方自治法が改正されて認められるようになった制度だ。
公の施設の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体を指定して、その施設の管理を代行して行わせることができるというもの。
法人その他の団体とは、株式会社などの民間営利事業者やNPO法人、その他の団体などのことで、指定を受ける者に制限はない。
この指定管理者を導入する図書館の割合が急速に増加している。2020年度には公立の図書館3378のうち、20.8%に当たる704が指定管理者を導入している。その指定管理者となっているのは、78.9%にあたる556が一般企業となっている=表4。