男性用化粧品が成長市場として注目されている。
清潔感を意識する若者が増えているのに加え、新型コロナウイルス禍でリモートワークが普及したのを機に、パソコン上などの画面映りを気にする男性が急増したことが大きな背景といえる。
新ブランドを立ち上げる企業も増加しており、市場は活況ともいえる状況だ。
肌悩みに応えるメンズスキンケア商品続々
資生堂は6月、Z世代男性特有の肌悩みに着目したというスキンケアブランド「SIDEKICK(サイドキック)」を立ち上げた。
同社にとっては国内で18年ぶりのメンズブランドになるという。化粧水とクリーム、シート状マスク、洗顔料の4品目で、オイリー肌や乾燥肌などさまざまな肌の悩みに対応する、とPR。中国市場への拡大も狙い、いずれはアジア全体に広げたい考えだ。
コーセーの子会社、コーセーコスメポートは2020年秋にトータルメンズケアブランド「マニフィーク」を誕生させ、商品のラインナップを増強している。
今春にはスキンケア機能に加え、肌を明るく見せる機能も加えた新商品「オールインワンジェル UV」などを投入した。
一方、6月から、ロングセラー商品「雪肌精」のCMにフィギュアスケートのスター選手、羽生結弦さんを起用し、性別を問わないブランドとしてのアピールも展開し始めている。
異業種からのメンズコスメ参入も相次いでいる。
サントリーウエルネスは今春、化粧水や美容液、クリームの三つの役割を1本でまかなえるという男性用スキンケア商品「VARON(ヴァロン)」を新発売した。同社独自の技術を活用し、ウイスキーたる材エキスなどを使ったという。
百貨店や都市部の商業施設では、男性用化粧品を専門に扱う売り場も続々と登場しており、「とくに、30~40代の男性が立ち寄るケースが多い」(都心の百貨店関係者)という。
コロナ禍で市場全体は縮小も、男性化粧品は伸びた
メンズコスメに関わる動きが強化されている背景には、男性化粧品の伸びがある。
調査会社インテージの推計によれば、コロナ禍が生じた20年の化粧品市場全体の規模は前年比11%減と大きく減った。だが逆に、男性の化粧品市場は4%増と拡大し、化粧水などの基礎化粧品では7%増も伸びた。
化粧品全体が縮小したのは、感染予防から女性が外出しなくなってメークする機会が減ったからだ。しかし、リモートワークによって男性は、画面で自分の顔をまじまじと見ることが多くなった。「顔色の悪さや老けて見えることが気になった」と話す男性は珍しくなく、化粧水や乳液を使うきっかけになったという人は多い。
インテージは「通勤時間や飲み会にかけていた時間やお金を、スキンケアに充てているようだ」とも分析。韓国の男性アイドルが化粧をしているのを見て、化粧品の使用を敬遠しない若者も増えたともみられている。
化粧品業界関係者の多くは「少子高齢化などで国内市場が縮小する中、メンズコスメは数少ない成長力をもつ潜在市場だ」と期待を高めている。
今後も新商品投入などで、市場が沸き続ける可能性は高そうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)