方向性がつかめない暗号資産市場にあって、今週(2022年7月25日週)は明治大学の城正人さんが動いた。保有するビットコインとFCRコインをすべて売却。わずかだが、プラスを確保した。
一方、北海道大学の花野直樹さん、東京大学の迫嵩明さんは動けず。北大の花野さんは「来週(8月1日週)以降も、経済指標から慎重に景気動向を読むような状況が続く」とみている。
ガンガン上昇する? インフレ率(北海道大学 花野直樹)
今週(7月25日週)はFOMC(米連邦公開市場委員会)やGDP(国内総生産)の発表とイベントが盛りだくさんの週でした。今週はイベントの結果次第で米ドルの動きが上に行くのか下に行くのか、わからず、ボラティリティが高くなりそうだったため、トレードはしなかったのですが、今後の値動きを予想するためにイベントの結果を振り返ってみたいと思います。
まずFOMCですが、市場の事前予測では1.0%の利上げなどもささやかれていましたが、結果は0.75%でした。利上げのペースは依然高いままですが、その後のFRB(米連邦準備制度理事会)、パウエル議長の会見で将来的な利下げについての言及があったため、それを受けて株価も仮想通貨も上昇する結果となりました。
次にGDPですが、こちらはマイナス成長となりました。2四半期連続のマイナスとなり、アメリカの景気後退が明らかになりました。これを受けて長期金利、短期金利が下落しました。金利が下がるとリスク資産が買われる傾向があるため、ビットコインやイーサリアムは上昇しました。
これらの結果を見て、今後の値動きを考えたいのですが、まず完全に底打ちして上昇局面に入っていくのはFRBが利下げを宣言した時だと考えています。そして今週の上昇は、景気後退による将来の利下げを見越した動きだったと思います。よって、今後上昇していくかどうかというのはFRBの金融政策がどうなるかということだと思います。
では、ここから利上げ幅がどんどん小さくなって利下げに転換するのかというとそれはインフレがどうなるかにかかっていると思います。インフレ率は先月までガンガン上昇しており、それを抑えるためにFRBは利上げをしているので、多少経済が傷んでもインフレが収まるまで利上げはやめないと考えています。
よって今後インフレが収まるような兆候が見えれば株価もビットコインも上昇しますし、インフレが収まらなければ、スタグフレーションという最悪な状況に陥り、最安値を更新していくことも考えられます。
したがって来週以降も無理なエントリーはせず、経済指標から慎重に景気動向を読むような状況が続くかと思われます。
最後に、テクニカル的にも先週(7月18日週)にお伝えしたフラッグの上限に達しており、ここから上値を追うのはかなりやりにくい状況にあると思います。
今週は取引を見送りました。
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
7月29日現在 9754円
◆ 池田昇太のワンポイントアドバイス
テクニカル、ファンダメンタルの両方をうまく利用し、トレードに活かしていると感じました。先週ご紹介されていたフラッグも有効に機能しており、実際に8月1日週はレジスタンスラインで反発し、下落している様子が見られますね。
ファンダメンタル面では、今後もアメリカの政策金利やインフレ率に気を付ける必要がありそうです。また、株式市場のアノマリーでは「セル・イン・メイ」(5月に売って9月に買う)という格言があります。もしアノマリーどおり、株式市場が9月にプラス局面に入れば、仮想通貨市場も影響を受けるかもしれません。
北大金融研究会の所属。ふだんはテクニカル分析を使った株式の短期トレードをしています。やるからには1位をとれるよう、頑張ります!
保有する暗号資産をすべて売却!(明治大学 城正人さん)
パリのイーサリアムカンファレンスで共同創業者「ヴィタリック」がイーサリアム(ETH)の今後について5段階に分けて話しました。その5段階とは「マージ」「サージ」「ヴァージ」「パージ」「スプラージ」=下の表参照。
前週(7月18日週)は「マージ」と「サージ」の2段階について取り上げました。こちらの記事を読む前に、その情報を知っていたほうがより理解が深まると思いますので、ぜひ読んでみてくださいね。
参考リンク:【1万円からはじめる暗号資産】暗号資産、久々の上昇もチャンス逃した? 北大 明大、東大は取引を見送り【暗号資産バトル 第8節】イーサリアムの開発状況は「まだ道半ば」!?(明治大学 城正人さん)
今週は次の3つを取り上げます。
(3)「ヴァージ」とは?
さっそく第3段階のヴァージについて――。ここでは「Verkle trie」がイーサリアムに導入されます。このヴァージは、今後の処理件数アップにむけ非常に大きな役割を果たします。
Verkle trieは、ひと言でいうと爆速で特定のデータを探す方式。例えば10億件のデータがあり、そのデータのうち1件に改ざん、変更が加えられた場合、どのデータが改ざん、変更されたのか調査するのは至難の業ですよね。
一つひとつ膨大なデータを照合していく必要があり、データ処理コストがムダになってしまいます。しかし、Verkle Trieを利用すれば数十回の検証作業で改ざんデータを特定できます。
BitcoinでもVerkle TrieのもととなったMerkle treeと呼ばれる技術が利用されており、ここから派生した技術となっています。
この技術はAmazonの提供するクラウドサービスAWSでも応用されており、実績は十分。これが「ヴァージ」です。
(4)「パージ」とは過去のデータの破棄作業
さて、ここまで来たらETH2.0の完成はまもなくです。パージの段階では検証作業の効率化を行うために過去のデータを削除していきます。
10年分の会計帳簿があったとして、うち7年分に関しては「正しい処理が行われた」というデータのみを残し、会計の詳細なデータは削除していくようなイメージです。データが大量に残っていても見返すことがなければ意味がありませんからね。
(5)最終段階の「スプラージ」
そして、最後にスプラージ。この段階では主に最終調整を行うようです。実際に4段階を経て細かな修正をかけていくようなので現時点で何をするのか詳しいことは不明ですが、この段階を経てイーサリアムの一たんの完成が達成されます。
単なる通貨としての機能のみで戦い、変わらないことに主眼をおいたビットコインに対し、イーサリアムはEVM(イーサリアムヴァーチャルマシン)によって「スマートコントラクト」の機能を実装、進化を推し進めています。しかし、その分アバランチなど他の高性能なEVMとの競争に晒されています。
変わらないことへの価値と、進化することで利用しやすくなることの価値、この絶妙なバランスの落としどころを探りながらイーサリアム財団は開発を続けているのでしょう。
◆ 今週の取引
保有する仮想通貨をすべて売却しました。
取引日時 取引した暗号資産 売買状況
7/31 ビットコイン 0.0001枚 売却 310万1398円 売却額 3101円
7/31 FCRコイン 2400枚 売却 0.524円 売却額1258円
利益確定 プラス50円
前週からの損益 プラス50円
7月29日現在 1万111円
◆ 池田昇太のワンポイントアドバイス
FOMC(米連邦公開市場委員会)後に短期的に上昇したところで、とても良いタイミングで売却できたのではないかと思います。長期的にはいまだ仮想通貨市場は下落トレンドですので、価格が落ち切ったタイミングで再度買えればベストですね。
また、今後のイーサリアムの開発の進捗も気になるところでしょう。ヴィタリック氏によれば、イーサリアムの開発は現時点で全体の50%が進んでいて、すべて完了するまでにあと6年かかるとのことです。
今後、予定どおりに開発が進めば、イーサリアムの評価・認知度は上がってくると思います。
2021年に引き続き、出場します! 投資対象として仮想通貨に興味を持つも、その技術の持つポテンシャルに惹かれDapp開発に着手。投資家としてだけでなく、開発者としての視点からの投資戦略も立てていきます!
Twitter: https://twitter.com/dennoah_jo
◆ 今週も取引を見送りました(東京大学 迫嵩明さん)
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
7月29日現在 1万円
学生投資連合USIC代表
高校3年生の時に株式投資のおもしろさに目覚める。日本株、米国株、仮想通貨投資を行う。長期的に伸びる市場でビジネスを展開している企業に長期投資することをモットーとしており、テンバガーを虎視眈々と狙っている。 金融を学ぶ「おもしろさ」、投資を始める「意義」を多くの人に知ってほしいと切に願う。
学生投資連合USIC:https://www.usic2008.org/
◆ ◆ アドバイザーのプロフィール
フリーランスのWebディレクター。金融系メディアを対象に執筆やディレクター業務に従事。投資歴7年。FXと仮想通貨をメインにトレードしています。ファンダメンタル分析よりかはテクニカル分析を好む。最近はNFT(非代替性トークン)の詐欺事例、法的問題について関心あり。
大学対抗戦「暗号資産バトル」競技ルール
・元本は1万円。
・通貨の選定は自由。ただし、国内の事業者で買える暗号資産に限定。
・レバレッジはかけられません。
・20%を超えて下げた場合は、強制的に取引を停止(ロスカット)とする。
・元本割れは1回まで。2回、資産を失った場合は、その時点でリタイアとする。
・運用期間は6か月。最終週時点での資産増減額で順位を決める。
学生投資連合USIC
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/