価格転嫁ができず、小売り・消費者団体に窮状を訴えるも...
しかし、損益面では苦戦が続いている。
2021年度の損益が判明した豆腐店のうち、赤字の割合は42%に達し、前年度(47%)に続き、2年連続で赤字の割合が4割台となった=図表2参照。背景には、主原料となる大豆、とくに米国・カナダ産大豆の仕入価格が高騰して調達コストが大幅に膨らんだことが大きい。
国産大豆は近年、収穫量減少が影響しており、輸入大豆に頼っているのが現状だ。しかし、その輸入大豆は、ウクライナ危機にともなう需給逼迫に加え、健康志向が高まっている中国で大豆の輸入量が増加していることも重なって、国際市況では高止まりが続いているのだ。
さらに、急速に進んだ円安の影響も受け、輸入価格が押し上げられている。帝国データバンクが推計した1キロ当たりの外国産大豆価格は、2022年は2015年から75%上昇、前年からも3割増加した。一方、「安さ」がウリの豆腐の平均単価はほぼ変化がなく、2022年も豆腐1丁(300グラム)あたり平均60~70円と、2015年の水準からほぼ横ばい状態だ=図表3参照。
この結果、豆腐1丁当たりの販売価格に占める大豆原料価格の割合は、2022年は外国産ベースで推計12%に達した。2020年までは6~7%前後で推移していたのに、2021~22年にかけて急激な原価上昇がみられた。
大豆価格の急激な上昇を販売価格に転嫁できない状況が鮮明となっている=再び、図表3参照。とくに、スーパー向けなどでは販売価格に十分な転嫁ができず、赤字に転落する「街の豆腐屋」の事例も散見された。
なお、卸先となるスーパーなどとの価格交渉では、ハードルが高いことが長年の課題だった。全国の豆腐製造業者でつくる日本豆腐協会と全国豆腐連合会が昨年(2021年)7月、スーパーなど流通業者と消費者団体に対し、窮状を訴える文書を連名で提出した。
大豆価格に加え、電気代など豆腐を作るコストが急激に上昇しているなか、「コストに見合った価格の変更ができなければ、経営が立ち行かなくなる」「努力や工夫で吸収できる限界を超えている」と訴えたのだったが......。
それから1年、大豆価格と電気代はさらに上がっている。
(福田和郎)