中国経済まで減速? エコノミストが指摘...不安要素の数々「ゼロコロナ」「文化大革命逆戻り」「指導部権力闘争」「就職氷河期」

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毛沢東の文化大革命に逆戻り、経済停滞に?

   ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎氏は、別のリポート「共同富裕に舵を切った中国~文化大革命に逆戻りし経済発展が止まるのか?」(7月19日付)のなかで、習近平政権が掲げる「共同富裕(皆が共に豊かになる)」という政策が、1960年代に毛沢東が行って中国全土を大混乱に陥れた「文化大革命」に逆戻りする危険性を指摘する。

   図表2が、習近平政権が最近進めている統制強化の動きだ。

(図表2)中国政府の最近の統制強化の動き(ニッセイ基礎研究所の作成)
(図表2)中国政府の最近の統制強化の動き(ニッセイ基礎研究所の作成)
「『共同富裕』の実現に向けて国民の自由を制限し、中国共産党による統制を強化する動きが目立ってきている。アリババ集団など巨大ネット企業などに対する独占禁止法違反を理由とした罰金の徴収、芸能人に対する税務調査強化や罰金の徴収、富裕層の財産に対する課税強化や富豪による第三次分配(高額寄付)の奨励など金持ち崇拝(拝金主義)を戒めるような動きがでてきたのに加えて、高価なことで庶民の生活を苦しめてきた『新三座大山』(教育、不動産、医療)の退治に乗り出したりしている」

   「三座大山」とは毛沢東時代の革命期に、庶民を苦しめる「帝国主義」「封建主義」「官僚資本主義」の「3悪」を指す言葉として知られる。さしずめ現在においては、格差を生む高額な受験教育、投資目的で高騰した不動産、高額な医療が庶民を苦しめる「3悪」というわけだ。このため、学習塾などを非営利化させる方針も打ち出している。

「さらには、習近平思想を小中高校で必修化したり、オンラインゲームでは未成年者の利用時間を制限したり、ライブ配信では芸能人などを応援する『投げ銭(おひねり)』を未成年者には禁止したりと、若年層への教育的指導も目立ってきている」

   こうしたことが、かつて、「反革命分子」と見做された資本家が三角帽子をかぶって自己批判させられ、古典演劇の京劇が革命模範劇に変質させられ、あるいは、若者たちが常に「毛沢東語録」を携帯していた文化大革命と重なる、というわけだ。

   しかし三尾氏は、毛沢東ほど極端に走らず、鄧小平のように、まずは経済発展を目指し、「共同富裕」は長期的な目標に置いているのではないかとみる。

   図表3は、習近平政権が目指す「共同富裕」のための所得再配分のイメージ図だ。

(図表3)現在の所得分布と目指す所得分布のイメージ(ニッセイ基礎研究所の作成)
(図表3)現在の所得分布と目指す所得分布のイメージ(ニッセイ基礎研究所の作成)
「現在の所得分布は富裕層が少なく貧困層の多い三角形のような分布になっていると見られるが、これを目指す所得分布である中間層の多いオリーブ型にするためには、『大金持ちの財産を減らす』とともに、その資金を貧困層の救済や教育に投入することにより、経済的に自立した中間層が増えて中間層の多いオリーブ型にすることができるという発想だ」

   こうした政策は、中国経済に打撃を与えるだろうか。

「『共同富裕』を実現するためには、統制を強化してこれまで自由だった経済活動に制限を加えることが必要となる。貧富の格差や腐敗・汚職の蔓延が是正されれば持続可能性は高まるだろうが、企業家精神(アントレプレナーシップ)やイノベーションに対する打撃は避けられそうにない。一方、経済発展が止まるようなこともないだろう」

   こう結んでいる。

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