二人以上世帯のネットショッピング利用、初の50%突破&支出金額も右肩上がり...コロナ以降、高齢層にも定着(鷲尾香一)

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   新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年にテレワークや外出自粛など行動制限が行われたことでネットショッピングが普及した。

   ネットショッピングは2021年に定着し、総務省統計局が2022年7月8日に発表した調査によると、二人以上の世帯におけるネットショッピングを利用した世帯の割合は、2002年の調査開始以来、初めて50%を突破した。

  • 総務省統計局「2021年 家計消費状況調査」に注目(写真はイメージ)
    総務省統計局「2021年 家計消費状況調査」に注目(写真はイメージ)
  • 総務省統計局「2021年 家計消費状況調査」に注目(写真はイメージ)

ネットショッピングの支出金額...2021年は1万8727円、前年比14.6%増

   二人以上の世帯におけるネットショッピングを利用した世帯の割合は、10年前の「ネットショッピング元年」と言われた2012年に初めて20%を突破した。前年よりも9.7%ポイントも利用世帯割合が増加した。

   その後も利用世帯割合は着実に増加を続け、2017年には30%を、2019年には40%を超え、2021年に二人以上の世帯の半数以上となる52.7%の世帯がネットショッピングを利用するに至った=表1。

   このネットショッピング利用世帯割合の増加には、一つの大きな特徴がある。それは、新型コロナの感染拡大以降、高齢者の利用が急増したことだ。

   2021年のネットショッピング支出金額について、世帯主の年齢階級別に前年比増加率を見ると、すべての年齢階級で増加しているものの、40歳未満は13.1%増、40~49歳は9.3%、50~59歳は9.8%増に対して、60~69歳は15.3%増、70歳以上は27.6%増と大幅に増加している。

   特に、年齢層が高くなるほど、ネットショッピング支出金額の増加率が伸びており、これは高齢者がネットショッピングを本格的に利用し、ネットショッピングが高齢者に定着してきていることの表れだ。

   一方で、新型コロナとネットショッピングの関係を紐解くと、新型コロナ感染拡大前の2019年、ネットショッピング支出金額は1か月平均で1万4332円だった。

   これが、2020年には1万6339円と前年比で14.0%も増加、2021年には1万8727円と同14.6%も増加している。

   2019年、2020年、2021年の月別のネットショッピング支出金額の動きを見ると、2020年の2月と3月は2019年を下回っていることがわかる。だが、それ以降は2020年、2021年の各月とも前年の実績を下回ることはない=表2。

   つまり、2020年の新型コロナ感染拡大により、同年4月からネットショッピングが盛んに使われるようになったわけだ。

何がよく買われているか? 利用項目別に見ると...

   その理由とも言える特徴は、利用項目別の動きに現れている=表3。

   ネットショッピングによる1か月平均の食料購入額は、2019年に1986円だったのが、2020年には前年比55.9%増の3097円に、2021年には同36.4%増の4223円に増加した。

   対照的な動きをしているのが、旅行関係費で2019年の3407円から2020年には前年比51.7%減の1647円に、2021年も同6.4%減の1542円に減少した。新型コロナによる影響が大きく表れており、影響は2021年も続いていることがわかる。

   一方で、出前は2019年に180円だったのが、2020年には前年比3.1倍の560円に増加したが、2021年には同6.1%減の526円となった。2021年には外出自粛が緩み、外食をする人が戻ってきている様子がうかがえる。

   同様のことはチケットにも言え、2019年に684円だったが、2020年には前年比54.2%減の313円にまで落ち込んだ。だが、2021年には同45.4%増の455円にまで回復している。

   つまり、旅行関連には新型コロナの影響が続いているが、外食や映画、コンサート、遊園地などチケット販売では回復が進んでいる。食料では新型コロナの影響だけではなく、ネットショッピングを利用するのが定着していると見て取れる。

   一方で問題もある。ネットショッピングの利用が増加し、定着するということは、新型コロナで大きなダメージを受けた実店舗による販売、小売業への影響が続いているということでもある。

   これは、実店舗による販売という「商売のやり方そのもの」に、課題を投げかけているのかもしれない。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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