「がんに立ち向かうには、どうすればいいでしょうか」。健康なときにはなかなか意識しないこの問題は、がん告知を受けたとき、また、がん治療がスタートしてからも、患者やその家族を大いに悩ませます。そして、悩み抜いた末に「孤独」に陥ってしまう人も少なくないのです。「がん」と宣告されたら、あなたはどうしますか?
「がんになって~今日は治療だから休みます」(下澤純子 著)みらいパブリッシング
民間療法は気になるけれど...
ネットワークビジネスを否定しているわけではありません。しかし、他人の弱みに付け入るのが上手い人がいます。以前、筆者である私の知人で難病に罹患した人がいました。気が付いたら、壺やら絵画やら、「波動がよくなる」とされる置物を買わされていました。それらの商品が役立つことはありませんでした。同様に、下澤さんのところにも営業マンが殺到したようです。
「がんになれば、誰もが一瞬は民間療法が気になるのは当然だし、ネットワークビジネスに関しては、むしろ、お金さえあれば使ってみたいものがたくさんあります。ここで言いたいことは、その商品に、がんが治るという根拠がありますか? 言い切れますか? さらには自信が持てますか? ということです」(下澤さん)
「治療法を決めるのはもちろん自分だということ。友人の言う通りにして、それがもしうまくいかなかったとしても、その友人に責任は取れないのです。迷うならば、まずは担当医に相談しましょう。担当医が忙しいのであれば、看護師です。治療で迷った時に相談する相手を間違わないようにしましょう」(同)
通常、標準治療があり、化学療法、手術、放射線治療に移行します。「あなたのがんは、こういう種類だから、この治療で治療します」というプランを、患者のことをよく知る担当医が主導して、患者と一緒に立てていくものです。
「病院から帰宅したら、『この○○を試してみて!』『抗がん剤なんてやってはダメ』など、そのがんが、どんなものなのかを全く知らない人たちに言われるのです。親切で提案していることが、がん患者にとって、混乱を招き、傷つけている場合があります。それよりも先に、その人のがんを知るということをしてみてください」(下澤さん)
悩みを一人で抱え込まないこと
がん告知を受けた方々の多くは「否定→怒り→落胆→回復」の心理状態をたどるといいます。がんは死の告知ではありませんが、葛藤する人が多いということです。事実、筆者である私の周りにも、「怪しげな」民間療法に手を出して、不幸な結果になってしまう人もいました。正しく知り、正しく恐れ、限界に制限をかけないことが必要なのだと理解しました。
ポジティブな性格の方は、立ち直りやすいと聞きます。一方で、悩みを抱えがちな方はふさぎ込み、生きる気力を失ってしまいます。悩み抜いた結果、抑うつ状態に移行するケースも珍しくありません。自分一人ではどうにもならないときは、仲間のところに行きましょう。孤独に悩んでいては、どんどん世界が狭まってしまいます。
では、どのような人に会えばいいのでしょうか。がん患者の方々にとって最も心強い味方は、がんの苦しみを分かち合える存在。いわゆる「がんサバイバー」です。過去には、絶望の淵に立たされていた方もいるでしょう。健康な家族や友人には理解してもらえない悩みも、彼らは深く共感し、よき相談相手となってくれるのです。
本書には、「がんになりました」と自らのSNSで公表した著者が体験した周囲の反応と、自分の気持ち、日常生活を通して感じたリアルがしたためられています。多くの人に目を通してもらいたい一冊です。
(尾藤克之)