キャッチーな名前で、警戒心を抱かせる効果?
それにしてもなぜ、「ケンタウロス」の「あだ名」が世界中で広がったのでしょうか?
「ケンタウロス」はギリシャ神話に登場する半人半獣の種族の名前で、上半身が人間で下半身が馬のような姿をしている想像上の生きものです。映画の「ハリー・ポッター」やボッティチェリの絵画などでその姿を目にした方もいると思いますが、「暴力や獣性を象徴する」という解釈があります。
今回、「名付け親」はBA.2.75の「獰猛さ」を表すために「ケンタウロス」の名を使ったと解釈されているそうですが、これほどまでに広がった理由を海外メディアは次のように解説しています。
まず、「人々は数字や文字よりもニックネームの方が理解しやすい」という指摘です。「BA」や「ベータ」のような文字や「5」や「2.75」といった数字は記憶に残りにくいうえに数多く存在するため、今の世界は「the different subvariants is a mess」(いろんな変異株が混乱している状態)だと伝えています。
さらに、「ケンタウロス」のように「キャッチーな名前」は注目を集めやすく、統一のイメージを抱きやすい、と分析しています。たとえば、「半人半獣のケンタウロス」からは、BA2.75の「獰猛さ」や「異質さ」を思い浮かべるため、「今度の変異株はこれまでとは違うようだ」と、警戒心を抱かせる効果があるというのです。
「BA2.75が日本に上陸した!」という表現よりも、「ケンタウロスが日本に上陸した!」という方が「大変だ!」と危機感が伝わるというのですが、日本人にとって「ケンタウロス」はなじみが薄いので、「ゴジラ襲来!」の方がインパクトありそうです。
ちなみに、「ケンタウロス」とほぼ同時期に日本での感染が確認された「サル痘」は、研究用のサルから初めて発見されたことに由来するそうですが、「サルが感染源」という意味ではないとのこと。名前が与える影響力の大きさを改めて意識した次第です。
それでは、「今週のニュースな英語」は「name after」(~にちなんで名付ける)を使った表現を紹介します。
This building was named after the first American president.
(この建物はアメリカ初代大統領にちなんで名付けられた)
Covid-19 were named after the country where they were first discovered.
(新型コロナは、最初に発見された国の名前をつけていた)
She was named after a famous musician.
(彼女は、有名な音楽家にちなんで名付けられた)
海外メディアによると、専門家は「『ケンタウロス』ではなく『BA2.75』を使え」と取り消しに必死のようですが、「民意」をつかんだ「素人」のネーミングに軍配は上がっているようです。
(井津川倫子)