FRBの利上げ、次のステージに移行
そのFRBの利上げ姿勢が新たなステージに入ったと注目するのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏のリポート「FRBの金融引き締めは次のステージへ」(7月28日付)によると、FRBの今年3月からの4回連続の利上げは、物価高対策が遅れてしまったとの認識から、いわば「(景気後退に)目をつぶって」急いで利上げした結果だったという。
ところが今後は、利上げは続けるものの、経済指標に目を配りながら利上げペースを調整していくことになる。FRBの利上げには、次の5つのステージがあるという。
(1)物価対応の後れを取り戻すため目をつぶって大幅な利上げを進めるステージ1。
(2)金融政策の正常化は相応に進んだとの認識から、景気と物価の双方をにらみ、経済指標に応じた形で利上げペースを調整するステージ2。
(3)景気悪化のリスクにも配慮して利上げペースを明確に低下させるステージ3。
(4)追加利上げを見合わせるステージ4。
(5)利下げに転じるステージ5。
そして、7月26日・27日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)は、FRBの政策姿勢がステージ1からステージ2に移行したことものだったと考えられるという。木内氏はこう説明する。
「その背景にあるのは、FF金利(政策金利)が今回2.25%~2.5%に達したことだ。(中略)FOMC参加者が経済に対して中立的と考える水準だ。この水準まで正常化策が進んだことで、FRBは政策姿勢を変化させたのである」
しかし、今後はどうなるのか。
「ただし、今後の経済、物価指標次第では、0.75%といった大幅な利上げの可能性がまだ残っている状況だ。それゆえに、短期的には金融政策を巡る不確実性はなお大きい」
「早ければ9月の次回FOMCで、FRBの政策姿勢はステージ3に移行し、年内にステージ3、来年前半にステージ4と、急速に移行していく可能性が考えられる。
現状では、金融市場は年末までに3%台前半から半ば程度までの利上げを織り込んでいる。政策金利がこの水準に達すれば、FRBが注目する短期金利と18か月国債利回りとが逆転する逆イールドが生じ、FRBは金融緩和を視野に入れ始めるだろう」