「時短勤務者が昇格できないのは不公平!」。こんな女性の投稿が炎上気味だ。投稿者は勤続19年、会社に尽くしてきたという自負がある。
しかし後輩が次々と昇格するのに、自分を含めた時短勤務者は役職につけないでいる。「時短は人数にカウントしていない」とまで職場で言われて怒り心頭だ。
この投稿には「昇格したければフルタイムで働いたら?」「先に退社した後に職場でトラブルがあったら、責任とれるの?」という反発がある一方、「私は時短でも昇格できた!」という応援エールも寄せられ、論争がアツイ。専門家の裁定は――。
長年、「会社に尽くしてきたのに」!
話題になっているのは女性向けサイト「発言小町」(2022年7月16日付)に載った「時短勤務は昇格認めてもらえない」というタイトルの投稿だった。
投稿者は時短勤務の女性。20歳の時から19年間、正社員として勤めているという。4年前に親会社が変わり、組織は新しくなったが、働く場所や仕事内容は同じだ。前の組織にいるときは10年ぐらいフルタイムで働いたが、出産後復帰してからは時短勤務に変わった。役職はついていない。
「私より後輩だった人が皆昇格していくなか、私はずっと役職がつかないまま現在に至ります。(中略)会社は細かく役職が分かれていて、何年かするとすぐにステップアップするのですが、私は20歳の時から合計19年間勤務して、ここまで会社に尽くしてきたのに、それを認めてくれないのだ、という気持ちでとても悲しくなり、不公平で不快な気持ちです」
会社との面談の時、「私は通算19年働いていますが、まだ役職つかないのですか?」と聞くと、「新しい組織になってからはまだ3年でしょ?」などとはぐらかされた。しかし、3年でも後輩はステップアップして役職についている例もある。また、ほかの時短勤務者たちは、スタッフのまま役職についていないようだ。
「ほかの時短のママさんに聞いても、私も頑張っているけど役職つけてもらえないと言っていました。会社は認めてくれないし、不満で爆発しそうです。同じ(勤務)場所の人は、シフト作る時に時短は人数にカウントしないと言っていたそうです。私も皆さんと同じように忙しいのに雑用と普通の仕事もこなし、帰って子どものご飯を作り、座る瞬間はご飯食べる時と寝る前だけです」
こう投稿者は憤るのだった。
「フルタイムで働けるよう努力するべき」の声
この投稿には、「時短の人が昇格したいということに驚いた」「昇格したければ、フルタイムで働けるよう努力するべき」という批判の意見が相次いだ。
「私の勤める会社も時短中は昇格がありません。(中略)キャリア形成を優先している同期や友人は、時短どころか育休すら取らず、3か月で産業医の承認をもらって復帰しています。長時間預けられる保育園やベビーシッターで乗り切っているようです。
それが正しいとは言いませんが、条件が異なる以上完全な平等はないと思っています。(中略)現状を受け入れるか、せめて時短をやめて残業なしで勤務できるよう、もうひと頑張りすることをおすすめします」
「何が何でも同期から遅れを取りたくないからと、産休のみで復職し時短も取らず、残業も出張もこなしている方が私の勤務先にいます。子育てをサポートしてもらうため、妻の実家のすぐ近くにアパートを借りて、夫の方が1年近く育児休業を取りました。(中略)育児休業くらい取得するよう、ほうぼうから説得されましたが、頑として聞き入れず、同期の中では出世頭です。
育児休業や時短勤務を取らないから出世したというより、仕事に対する姿勢が周りとは違うのですよね。ここまで極端にやれとは言いませんが、時短勤務しながら昇格したいなら、よほど業務生産性を上げないと難しいと思います」
「部下のミスでクレームがきたら、その日のうちに謝罪に行けますか?」
時短経験者からも、こんな諭すような意見が寄せられた。
「元時短です。いま管理職になるため、いろいろと勉強していますが、その中で時短について言われました。(中略)『どんなに時短で成果を出したとしても、フルタイムと比較するとどうしても生産性は落ちる。頑張りを評価して、ボーナスなどで加算してあげることはできるが、昇進の話になると、フルタイムとの比較になるので難しい』と。
そしていま後輩が時短です。私が時短の時は分かりませんでしたが、フルタイムに戻り、残業時間ともなると後輩の話はたまに出てきます。『本当はやってもらいたい仕事があるけど時短だから...』とか、『まだ子どもが小さいから無理かな...』といった話です。私も当時は頑張っていたけど、いない時はこんな風に言われていたのだろうなと思っています。(中略)でも、挫けず真面目に頑張ってほしいです。フルタイムに戻ってからの昇進は早いかもしれません」
また、「昇格するということは部下ができること。時短のあなたが先に帰った後にトラブルが起ったら対応できるのか」という問題点を指摘する声も多く寄せられた。
「昇格するということは、普通に部下ができますよね。マネジメントが発生しますよね。そうしたら、下が問題発生した時に『時短なのでもう帰っています』とか『子どもがお熱で帰ります』とか言えないわけです。自分が困っている時に上司はほとんどいない、なんて、そんな人が上司になって困りませんか?」
「部下がミスしてクレームがきたら、その日のうちに謝罪に行けますか? 行けませんよね。私の会社も、時短はみんな、産休に入る前に役職についていても、復帰したらみんな平社員だし、復帰して時短で数年働いていても、みんな平社員ですよ。時短で働いているのに、役職がほしいと思う人がいることにびっくりです」
「時短ですが昇格しました! 夫の協力あってこそです」
一方で、「うちの会社では時短の人でも昇格」するという意見も少なくなかった。なかには「時短ですが昇格しました!」と体験談を寄せる人も。
「私の会社は時短でも昇進します。ただし、昇進試験と役員面談を経て認められたらです」
実際に「時短で昇格!」したという2人の生々しい努力、奮闘ぶりを紹介したい――。1人目は、19歳で第1子出産、21歳で就職、26歳で時短切り替え、28歳で第2子出産。その後、生後6か月で時短復職、3か月後に昇格し、中間管理職となったという。
「時短=昇格できないではないです。私が証明します」としたうえで、なぜ昇格できたか、その理由をこう書いている。
「なぜ昇格できたか自分が思うポイントですが、
・産休に入るまでの時短の時も主力メンバーで調整役的な役割を担っていた。
・日勤は時短ですが夜勤は独身メンバーと同じ最大回数をこなしていた。
・保育園や学校からの呼び出しは就職以来1度もなかった。
・子どもを理由に休むことがほぼなかった。
・土日祝、盆正月もみんなと同じように出勤していた。
・他スタッフの急な休みにも対応していた。
・時短といえども、実際現場が回っていない時は2時間ほどの残業が許された。
・育休から時短復帰後も上記の働き方は変わらず、土日祝出勤や夜勤もすぐ再開させた。
(中略)出世欲があったのでそこは意識したところです。ですが、これは夫の協力あってこそです。頼れる祖父母はいません」
男性の嫉妬「早く帰るのに昇進、やってらんない」
現在、アラフィフというもう1人のケースはこうだ。
「もう昔の話ですが、私は時短取りながら昇進しました。でも短い時間の中で他人の3倍働いて、成果も人より上げたので当然でした。アクシデントがなければ時短で帰るけど、いざという時は夫と保育ママ、シッターなど二重三重に手だてをとって、対処していました。要は、上から『この人なら責任持たせて大丈夫』と思ってもらえたってこと。若干、男性から嫉妬の文句は言われましたけどね。『早く帰る女が昇進なんて、男はやってらんない』ですって。本音だろうな、と思いました。そりゃ、ただ時短取って普通の働き方していたら、昇格しないでしょう。それを認めたら、時短取らずに働く人からクレーム出ますよ」
「時短を取っていても出世している例がうちの会社にもあるので、出来ないということはありません。ですが、そういう人ってやっぱり具体的な成果があるし、夫と手分けして急な休みや早退に対応して、やむを得ない場合は家に帰ってから対応するなどの責任感を見せているのです。『私、頑張っています』なんて言いません、頑張るのは当たり前ですから。あなたが、その会社で出世昇格したいなら、数字や成果をきちっと示してアピールすることではないでしょうか?」
職場の常識「時短勤務だから昇格対象ではない」はおかしい
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、時短勤務の女性が「昇格したい」と投稿したことをめぐる論争について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに意見を求めた。
――今回の投稿と回答者たちに意見を読んで、率直にどのような感想を持ちましたか。
川上敬太郎さん「フルタイムが基本となっている職場の中で時短勤務する人は、どうしても特別な存在と見られてしまいます。ただ、『時短勤務だから昇格対象ではない』のと、『昇格対象でない人が時短勤務している』のとでは意味が全く異なってきます。
一方、回答者の方々からは『時短勤務だから昇格対象ではない』ことを当然と見なす意見が多く見られました。それは、これまでの職場の常識を反映した声ではあると感じました。しかし、そのような声が多いということは、職場の常識があまり変わっていない証拠でもあると思います」
時短勤務の女性が「昇格したい」と投げかけた今回の投稿について、川上さんのアドバイスも熱を帯びました――。<「時短勤務、昇格できないのは不公平!」女性の投稿に大激論 「退社後、部下がトラブル起こしたら責任とれる?」「私、時短でも昇格した」...専門家に聞いた(2)>に続きます。
(福田和郎)