分厚い漫画雑誌と違い、スマートフォンがあれば、いつでもどこでもいくらでも楽しめるコミック(漫画)アプリ・サービス。
いったいどこのサービスに人気があるのだろうか。デジタル市場専門の調査会社「MMD研究所」(東京都港区)が2022年」が2022年7月25日、「コミックアプリ・サービスに関する調査」を発表した。
3人に1人が利用するというこのサービスに、アノ2強が浮上。そして、世界を席巻中の話題の韓国発デジタル漫画「WEBTOON」の評判はいかに――。
フルカラー、縦スクロール「WEBTOON」の人気の秘密
コミック(漫画)アプリ・サービスは、コロナ禍でステイホームが長くなったこともあって、飛躍的に利用者が増えている。たとえば、「日経MJ」(2021年12月10付)の報道によると、2021年10月の漫画アプリの月間利用者数は、上位6アプリだけで2438万人に達し、2019年10月と比較して2.32倍に増えた。
そんななか、最近話題になっているのが韓国発のデジタル漫画「WEBTOON」(ウェブトゥーン)だ。「WEBTOON」はWebとCartoon(漫画)を組み合わせた造語だ。コミックアプリの作品は、漫画雑誌で掲載された作品が基になっている場合が多く、横にスクロールしながら読んでいく。
「WEBTOON」は、もともとスマホやタブレットで読むために作られた漫画で、「縦スクロール」が特長だ。日本ならば右上から左下、アメリカであれば左上から右下に読まれるような、国による「漫画の読み方の差異」の影響を受けないため、世界的に人気が上昇している。
しかも、出版が前提になっていないからフルカラーで表現することが多い。白黒作品が多い従来の漫画アプリの作品に比べて、迫力がある。さらに、途中で音楽やアニメ動画が入ったりして、スマホの小さな画面でもリッチな読書体験ができる。
おまけに、目線の動きが縦中心のシンプルなものになり、横にスクロールする漫画より、目があまり疲れないともいわれる。若い世代だけでなく高齢者にも人気だ。「新しいコミックの形」として、「WEBTOON」市場に参入する企業が日本でも増えているのだ。
「LINEマンガ」と「ピッコマ」が2強...他を引き離す
MMD研究所の調査は、スマホやタブレット、パソコンを所有する全国の6782人が対象。
まず、「コミックアプリ・サービスを利用したことがあるか」を聞いた。「ある」と回答したのは35.6%となり、性別年代別で見ると、最も利用経験の割合が高かったのは女性10代(68.2%)だった。次いで、女性20代(56.7%)、男性10代(54.8%)と続いた。シニア層でも、男性60代(11.5%)、女性60代(10.9%)と、1割強の利用者がいることが目を引く=図表1参照。
コミックアプリを利用したことがあると回答した2416人に、利用したことがあるサービスを聞くと(複数回答可)、「LINEマンガ」(41.9%)と「ピッコマ」(37.3%)の2強が他を引き離した。次いで「少年ジャンプ+」(23.4%)、「めちゃコミック」(22.7%)、「コミックシーモア」(23.4%)が続く=図表2参照。
さらにコミックアプリ利用者に、サービスへの課金経験を聞くと、46.2%が「課金したことがある」と答えた。最も課金経験の割合が高いのは、男性20代(59.8%)で、次いで男性30代(55.4%)、男性40代(52.8%)と続く。全体的に男性のほうが、女性より課金経験の割合が高い=図表3参照。
興味深いのは、利用経験率が最も高い女性10代の課金経験率が21.6%と、最も低かったことだ。男性10代(42.9%)と比べたら、約2分の1である。女の子は男の子よりシッカリしている、ということだろうか=再び、図表3参照。
また、コミックアプリ・サービス別で課金経験の割合を見ると、ebookjapan(52.2%)で最も高く、コミックシーモア(45.3%)、Renta!(41.9%)、めちゃコミック(39.0%)が上位にならんだ=図表4参照。「LINEマンガ」(22.4%)と「ピッコマ」(24.1%)の2強の倍近い課金経験割合である。もっと読みたくなる作品ラインアップで稼ぐビジネスモデルを確立しているようだ。
60代シニアの目に優しい「WEBTOON」
さて、コミックアプリ・サービス利用者を対象に、いま話題の「WEBTOON」(ウェブトゥーン)の漫画の例を示したうえで、「WEBTOONを知っているか、閲覧したことがある」を聞いた。
それによると、「言葉自体を知っている」と答えた人は31.8%だった。また、「言葉自体は知らなかった」という人も含めて、「閲覧したことがある」人は41.7%となった。「言葉自体は知らなかった」人が7割近い68.2%いた=図表5参照。
まだ、名前はあまり浸透していないが、知らないうちに読んでいる人が4割近くいるということだろうか。
では、どんなサービスで「WEBTOON」を読んでいるのか。WEBTOONの閲覧経験者に聞くと(複数回答可)、「LINEマンガ」(30.5%)と「ピッコマ」(27.5%)の2強が他を引き離し、「めちゃコミック」(13.0%)、「コミックシーモア」(10.9%)、「comico(コミコ)」(9.9%)が続いた=図表6参照。新たに始まった「WEBTOON」の分野でも、「LINEマンガ」と「ピッコマ」が他のサービスをリードしていることが明らかになった。
前述のように「WEBTOON」は、縦スクロールという独特のフォーマット(紙面のコミックと同様のコマ割り)を持っているが、従来の横スクロールのコミックアプリ・サービスとどちらを読みたいのだろうか。
WEBTOON閲覧者に聞くと、面白い結果が出た。「WEBTOONのフォーマットで読みたい」と「どちらかというとWEBTOONのフォーマットで読みたい」を合計した割合)は全体では4人に1人の25.0%となった=図表7参照。
しかし、性別年代別でみると、10代・20代男性と、20代・30代女性は、WEBTOONで読みたいという意向が他の性年代と比べて低い結果となった。しかし、男性60代(合計40.0%)と女性60代(合計34.9%)では、若い世代より高い結果が出たのだ=再び、図表7参照。やはり、シンプルな目線の動きなどがシニア層に受けているということだろうか。
調査は2022年6月29日~6月30日、スマートフォン、タブレット、パソコンいずれかを所有する全国の15歳~69歳の男女6782人にインターネットを通じてアンケートした。そのうちコミックアプリ・サービスの利用者2416人に集中的に聞いた。
(福田和郎)