工業用ガス大手、エア・ウォーターの株価が2022年7月21日まで、6営業日連続で終値ベースで続伸した。
7月21日には一時、前日終値比59円(3.4%)高の1820円まで上昇して、1月以来、半年ぶりの高値となった。週が変わった25日以降も値崩れは起きていない。
野村証券が21日配信のリポートで、投資判断を3段階で真ん中の「ニュートラル(中立)」から最上位の「バイ(買い)」に格上げしたことも後押ししているようだ。
最終利益57.9%増の432億円、増収増益に
なじみがない人も多いかもしれないので、まずはエア・ウォーターの概要を確認しておこう。
戦前に北海道で創業した「北海酸素(のちに、『ほくさん』)」と、やはり戦前に大阪で設立された「大同酸素」という工業用ガス会社が1993年に合併し、「大同ほくさん」となった。さらに、戦後に和歌山市で発足した「共同酸素」と2000年に合併し、現社名の「エア・ウォーター」が誕生した。
本社は大阪市に置いている。国内の工業用ガスでは、日本酸素ホールディングス(HD)が首位で、エア・ウォーターと岩谷産業が2位グループという構図だ。
エア・ウォーターの2022年3月期連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益が前期比10.2%増の8886億円、営業利益が27.2%増の651億円、最終利益が57.9%増の432億円で増収増益だった。
国内が総じて堅調なうえ、インド事業の好調なども寄与した。
幅広い領域で多角化経営、「安定成長性が高い」
野村証券による格上げの理由をみてみると、「産業ガス値上げによる収益性改善、コロナ禍で停滞したM&Aの再加速、グループ全体の合理化の進展などが業績拡大と株価上昇の材料」という。
ガス値上げやM&Aの再加速がこれから見込まれる、ということが大きく、目標株価も2050円から2300円に引き上げた。さらに、エア・ウォーターが医療や農業・食品、バイオマス売電など、幅広い領域で多角化経営をしていることから、「安定成長性が高い」ことも評価している。
エア・ウォーターは7月15日、2030年度を最終年度とする長期経営計画を発表。インドや北米で事業を拡大し、海外売り上げ比率を2021年度の8.6%から20%に引き上げることなどを掲げた。
こうした戦略も市場で評価されており、当面、株価が上値を追う可能性もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)