ヤフーが、運営するインターネット通販サイトの「ヤフーショッピング」と「PayPay(ペイペイ)モール」を、2022年10月に統合する。グループの連携を強め、使い勝手を向上させて集客力を高める考えだ。果たして、競合する楽天市場やアマゾンにどこまで対抗できるのか。
ヤフー、PayPay、LINEの強みを最大活用
検索サイトのヤフーは約8600万人、PayPayの決済サービスは4700万人の利用があり、同じZホールディングス(HD)傘下の通話アプリLINEの利用者も9200万人に達する。
ただ、連携は十分とれているとは言えない。PayPayモールの利便性は定評があるが、PayPayのアプリからはPayPayモールに連動しているだけで、ヤフーショッピングには行けない。還元率も異なる。さらに、PayPayモールやヤフーショッピングのLINEを活用した情報提供なども限定的だ。
このため、2021年12月の月間視聴者数は楽天市場の5104万人、アマゾンジャパンの4729万人に対して、ヤフーショッピングは2288万人と、水をあけられている。
これを挽回するために、ヤフー、PayPay、LINEという認知度の高い自社の3つのアプリを軸に、「経済圏」拡大を本格化する方針で、その第一歩が、今回のヤフー・PayPayのネット通販一本化だ。
具体的には、サービス開始が早く、利用者が多いヤフーショッピングに、ネット通販サイトを一本化する。
2019年に優良出店者のみを集めて立ち上げ、家電や化粧品、衣料品などの高級ブランドも取り扱うPayPayモールは、商品情報などがわかりやすいデザイン、豊富な項目で商品を探しやすい検索機能などの利便性に強みがあった。
これを強化しつつ、4億点を超える商品を掲載、多くのユーザーを抱えるヤフーショッピングの強みと合体し、相乗効果を狙う。「PayPayポイント」などユーザーへの還元も、よりシンプルでわかりやすくする計画だ。
LINEとの連携では、出店者にLINEの公式アカウントを作成するよう促し、LINEを使って、商品紹介や問い合わせへの対応など消費者とのやりとりをしやすくする。
楽天、アマゾンも取り組み強化...競争は一段と激しく
消費者がネット通販で重視する配送についても力を入れる。
ZHDは2020年にヤマトHDと業務提携し、配送時間を短縮するために、商品をヤマト運輸の倉庫に預ける仕組みを強化している。
注文当日から翌々日までに配送する出品者に付与する「優良配送」アイコンをヤフーショッピングの検索結果にも表示させるなど、ユーザーに訴求するほか、出店者に対する還元強化などで、配送サービスの質の向上を図る。
ただ、ライバルの楽天やアマゾンも、さまざまな手を打っている。
楽天は「楽天市場」と「楽天西友ネットスーパー」、「楽天ビューティ」など、ネット通販サービス間で会員の横断利用の拡大に加え、スーパーや百貨店などの実店舗とネット通販をつなぐ戦略に本腰を入れる。
アマゾンジャパンも、商品の在庫管理から梱包、配送、顧客対応サービスまでを中小規模の出店者に丸ごと支援のパッケージを提供する取り組みなどを強化している。
各社の品ぞろえやサービスを巡る競争は一段と激しくなるのは必至で、ヤフーが、楽天とアマゾンという2強をどこまで追い上げられるか、秋の統合の効果が注目される。(ジャーナリスト 済田経夫)