衝撃!「ゾンビ企業」がなんと1割強! 新型コロナ支援で増加...いままた円安・ウクライナ危機で「延命」続く?

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   「ゾンビ企業」という、おどろおどろしい名の会社が日本の企業になんと1割以上いるという――。帝国データバンクが2022年7月27日に発表したリポート「利払いの負担を事業利益で賄えない『ゾンビ企業』の現状分析」で明らかになった。

   「ゾンビ企業」とはその名のとおり、「生ける屍(しかばね)」と化した、事実上経営破綻している企業のこと。どうしてそれほど多いのか――。

  • いくら稼いでも借金を返せない「ゾンビ企業」(写真はイメージ)
    いくら稼いでも借金を返せない「ゾンビ企業」(写真はイメージ)
  • いくら稼いでも借金を返せない「ゾンビ企業」(写真はイメージ)

いくら稼いでも、どんどん利息の支払いに追われる「ゾンビ企業」

   「ゾンビ企業」はバブル崩壊後、企業の過剰債務と金融機関の不良債権問題がもはや解決不能と思われるほどに重くのしかかった1990年代後半に生まれた言葉だ。各国の中央銀行相互の決済を行う国際決済銀行(BIS、本部スイス・バーゼル)では、「ゾンビ企業」をこう定義している。

「設立10年超で、3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオが1を下回る企業」

   「インタレスト・カバレッジ・レシオ」(1CR)とは、利払い負担に対する利益の比率のことで、会社の借入金の利息の支払い能力を測る指標だ。ざっくり言うと、借金を払えるかどうか、企業の信用力を図るもので、次の数式で表される=図表1参照

(図表1)「ゾンビ企業」の定義(帝国データバンクの作成)
(図表1)「ゾンビ企業」の定義(帝国データバンクの作成)
《インタレスト・カバレッジ・レシオ=事業利益(営業利益+受取利息+受取配当金)÷金融費用(支払利息+割引料)》

   一般的には、倍率が高いほど、財務に余裕のある健全企業とされる。だが、この値が「1未満」になったら、分子の「利益」より分母の「利払い」のほうが大きいことになる。いくら稼いでも、どんどん利息の支払いに追われるだけで、いずれ破綻することは間違いない。

   帝国データバンクでは、この「ゾンビ企業」の定義を使って自社が保有する企業財務データベースから、該当する企業を洗い出した。すると、「3年連続インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が判明しており、かつ設立10年以上」の企業が2020年度で10万6918社であることがわかった。

業績悪い企業がコロナの「ゼロゼロ融資」で延命

   そのうち「3年連続でICRが1未満の企業は1万2037社あり、その割合は11.3%となる。つまり、日本企業全体の約11%が「ゾンビ企業」だと推計されるというわけだ。同様のやり方で算出した2007年度以降の「ゾンビ企業」率の推移を示したのが、図表2だ。

(図表2)「ゾンビ企業」率の推移(帝国データバンクの作成)
(図表2)「ゾンビ企業」率の推移(帝国データバンクの作成)

   これによると、2008年秋のリーマン・ショック以降、「ゾンビ企業」の比率は年々上昇し、2011年度には19.8%と2割弱に達した。これは同時期に、全国の企業倒産件数が年間1万1000~1万3000件に達するなかで導入された中小企業金融円滑化法によって、延命した企業が多かったという。

   その後、2015年度以降は10%前後で推移してきたが、2020年度は11.3%と、2019年度の9.9%から1.4ポイント上昇した。コロナ禍の無利子無担保の「ゼロゼロ融資」をはじめとするコロナ関連融資などがその一因となっている、と帝国データバンクは指摘する。

   では、「ゾンビ企業」の実数はどれくらいなのか。帝国データバンクの企業概要データベース(母集団146.6万社)を使って各年度の「ゾンビ企業」率を乗じた推移が図表3だ。これをみると、2020年度では「ゾンビ企業」は約16.5万社と推計される。

(図表3)「ゾンビ企業」の推計(帝国データバンクの作成)
(図表3)「ゾンビ企業」の推計(帝国データバンクの作成)

   さて、「ゾンビ企業」にはどんな特徴があるのか。

   2020年度に「3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上」の企業1万2037社に限って業種別にみると、「建設」(34.3%)で最も多く、次いで「製造」(20.0%)、「卸売」(18.9%)、「サービス」(同10.4%)が続いた=図表4参照

(図表4)2020年度の「ゾンビ企業」の傾向、業種別と従業員別(帝国データバンクの作成)
(図表4)2020年度の「ゾンビ企業」の傾向、業種別と従業員別(帝国データバンクの作成)

   とくに、「建設」の内訳をみると、鉄骨・鉄筋工事などの「職別工事」が13.9%、一般土木建築工事などの「総合工事」が12.6%、電気工事や管工事などの「設備工事」が 7.8%だった。

   また、従業員数別にみると、「5人以下」の企業(31.0%)、「6~20人」の企業(36.9%)など20人以下の小規模企業で約7割を占める=再び、図表4参照

ゾンビ企業経営者「融資が途切れると倒れる」

バブル崩壊が「ゾンビ企業」を生んだ(写真はイメージ)
バブル崩壊が「ゾンビ企業」を生んだ(写真はイメージ)

   「ゾンビ企業」の経営者にコロナ関連融資について意見を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「コロナ関連融資は大変ありがたい。これからの経済動向の変化で返済に大きな影響を与えないことを祈るばかり」(特殊産業用機械製造、山形県)
「コロナ関連融資があったため本当に助かった。もしなかったら存続が厳しかった」(印刷・製本・紙工機械製造、千葉県)
「今後融資が切れてくると販売先の与信に不安が生じる。主要取引先が倒れれば連鎖しかねない」(和洋紙卸売、栃木県)

   こういった返済期限の到来を不安視する声が目立ち、コロナ関連融資によって、多くの「ゾンビ企業」が延命している可能性がうかがえる。

事実上破綻している「ゾンビ企業」(写真はイメージ)
事実上破綻している「ゾンビ企業」(写真はイメージ)

   帝国データバンクではこうコメントしている。

「リーマン・ショック、新型コロナのパンデミックを通じた歴史的背景などから、政府の金融政策にもとづく銀行からの手厚い金融支援、緊急的な危機対応の政策が『ゾンビ企業』増加の1つの要因となっていると言えよう。とりわけコロナ関連融資については、もともと業績が悪い企業の延命につながったといった声も聞こえている。ただ、こうした支援策を足掛かりに苦境から脱し健全化した企業が一定数存在することも事実だ」

   そして今後も、

「円安にともなう原油・原材料高騰、ウクライナ情勢などの影響は、引き続き幅広い業種に及んでいくだろう。それを軽減するための金融支援策が実施される ことで、当面は『ゾンビ企業』の延命が続くことが予想される」

と指摘している。

(福田和郎)

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