民事と刑事で分かれる司法判断...問われる東電と国の責任分担のあり方

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「原発推進」VS「脱原発」割れる論調

   今回の13兆円にのぼる賠償判決について、大手6紙は7月14、15日に一斉に社説(産経は「主張」)を掲載した。その論調を比べてみよう。

   原発推進を社論とする読売新聞と産経新聞は地裁の判決を異例といえるほど批判する。

   15日付の読売新聞は「最高裁は先月、避難住民らが国を訴えた4件の民事裁判で、津波の規模が想定より大きかったため、事故は防げなかったとする統一判断を示している。......地裁が最高裁と正反対の判断を示すということを、どう理解したら良いのか。......刑事裁判の1審で、事故は予見できなかったとして無罪になっている。刑事と民事は異なるとはいえ、この違いも分かりにくい」と指摘。

   14日付の産経新聞は「またもや司法の大迷走だ」との見出しで、読売以上に強いトーン。「最高裁の判断に照らせば、旧経営陣が対策を講じていても事故は起きていたはずなので、株主側の主張とは正反対だ。それを認めた東京地裁の判決は最高裁の審理を無視したものとみられても仕方あるまい」とし、やはり刑事事件の一審無罪判決を挙げ、「刑事裁判と民事裁判の差があるにしても、同一地裁で津波被害の予見可能性について3年を経ずに逆の判断が示される事態は、迷走以外の何物でもあるまい。しかも個人の支払い能力を超越した天文学的な賠償額である。法廷の理性が疑われる」と今回の判決を、口を極めて『断罪』している。

   同じ原発推進の立場でも、14日付の日本経済新聞はもっと『理性的』だ。「原発がひとたび重大な事故を起こせば、周辺住民の生命や環境だけでなく、広範な地域で深刻な被害をもたらす。それゆえ、稼働させる事業者の経営陣は安全性の確保にできる限りの注意を払わなければいけない。判決はこう断じている」と指摘したうえで、「この指摘は電力会社に限らないのではないか。人命や人々の暮らしに大きな影響を与えるインフラ企業や交通機関の経営幹部も真剣に受け止めてほしい」と、判決の意味を訴えている。

   もちろん、それに続いて、最高裁判決や刑事裁判の1審無罪と判断が分かれたことも指摘するが、「引き続き法廷での審理を注視したい」と、冷静だ。

   これらに対し、脱原発を主張する3紙は、判決を評価する。

   15日付の毎日新聞は「判決は『原子力事業者の取締役として、安全意識や責任感が根本的に欠如していた』と厳しく批判した」、15日付の朝日新聞も「そろって取締役としての注意義務を怠り、地域と会社に甚大な被害を与えた」など、判決の基本認識を評価。東京新聞(15日付)は「今回の判決は、旧経営陣の過失を認めた初の司法判断で、賠償額としても過去最高になる。原発事故から約11年4か月。『後世に残る名判決』との声が上がるほど適切な判断だったと大いに評価する」と、最大級の表現で判決を評価した。

   具体的な点についても、

「旧経営陣は土木学会に検討を依頼するだけで対策を放置。判決は『対策の先送りで著しく不合理だ』と厳しく指弾した」(東京新聞)
「主要施設の水密化措置をとっていれば防げた可能性があると述べた。事実を踏まえた説得力のある指摘だ。最高裁の判断は早晩見直されなければならない」(朝日新聞)

などと指摘している。

   さらに毎日新聞は、

「審理では、事故を巡る裁判で最も多くの証拠が提出された。裁判官が初めて福島第1原発を視察してもいる」

と書き、最高裁判決に反する判決の重みを指摘している。

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