電力の供給力不足は「構造的な問題」...冬場に向けての懸念ぬぐえず
しかし、電力業界をよく知る関係者は「電力の供給力不足は構造的な問題。供給の安定化は、言うは易し、行うは難しというのが現実だ」と指摘する。
国内33基のうち、国に再稼働を申請したのは、すでに稼働可能となっている10基を含めて計25基ある。15基はいまだ立地自治体の同意など必要な条件を満たすことはできず、再稼働のめどが立たない。
「地域偏在」の問題もある。
稼働可能な原発10基はすべて西日本に位置している。東日本大震災による福島第1原発事故の記憶が強い東日本では、申請手続きの停滞が目立つ。東北電力・東京電力管内が特に電力需給が厳しい傾向にあるのは、このためだ。
しかし、政府はこうした「構造的問題」に長く抜本的な対策を講じることなく、電力の供給不足を放置してきた。老朽化した火力発電の再稼働にも限界があり、このまま供給不足の懸念を抱えたまま冬場に突入する公算が強い。
「政府の責任においてあらゆる方策を講じる」
7月14日の記者会見でこう明言した岸田首相だが、冬場の需給逼迫が現実になれば、その言葉はブーメランとなって自身への批判として跳ね返ってくる。(ジャーナリスト 白井俊郎)