「原発最大9基稼働」 電力逼迫対策アピールした岸田文雄首相の「欺瞞」

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岸田首相、「対応誤れば支持率急落」を懸念?

   最大の問題は、岸田発言が電力需給逼迫の解消に何らつながらないことだろう。

   経産省の電力需給見通しによると、今冬、10年に一度の寒波が到来した場合、国内10電力管内のうち8電力管内は2023年1月、電力供給の余力を示す「供給予備率」が安定供給に必要な3%を下回る懸念がある。東北、東京電力管内では3月も3%以下になると見込まれている。

   この見通しにはすでに「9基稼働」が織り込まれている。

   岸田発言の翌日に記者会見を開いた電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は「ほとんどの原発はすでに(計画に)織り込まれている。需給が厳しい状況には変わりない」と認めた。

   なぜ岸田首相は、実態として意味がないのを承知で原発の「9基稼働」を強調したのか――。その背景には世界的な資源高で電気料金の値上げが相次ぐ中、電力の供給不足の不安にもさらされる有権者のいら立ちがあると見られる。

   参院選で大勝し、安定政権に向けた大きな一歩を踏み出すことになった岸田首相にとって、目下の最大のテーマはインフレ対策だ。この対応を誤れば「支持率の急落など足元をすくわれかねない」(自民党幹部)との危機感がある。電力供給の安定化はこの延長戦上にある、というわけだ。

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