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がんばりすぎないで! 妊娠中~産育休中~仕事復帰のポイントとは

   いまや共働きは当たり前。だが、いざ妊娠すると、出産後も仕事に復帰してやっていけるか心配に思う人もいるだろう。本書「がんばりすぎないお仕事復帰BOOK」(KADOKAWA)は、働く女性のために仕事をうまく続けられるヒントをまとめたものだ。産休や育休中の不安が解消されるに違いない。

「がんばりすぎないお仕事復帰BOOK」(藤井佐和子、mamari監修)KADOKAWA

   本書は、キャリアアドバイザーの藤井佐和子さんとコネヒト株式会社が運営する母親向けアプリmamariが監修した。妊娠から、産休、出産、育休、仕事への復帰、子どもの保育園入園と流れに沿って、ノウハウを伝えている。

働く妊婦には、安全のためのさまざまな権利がある

   まず妊娠が判明したあと、心拍が確認できて流産のリスクが減る「妊娠10週ごろ」、早めに会社に報告することを勧めている。上司など周囲に「妊娠している」という状況を把握してもらい、スムーズにフォローしてもらえる環境をつくっておくことが大切だ。

   もしも、妊娠を理由に、解雇や格下げを迫られるようなことがあれば法律違反だ。遠回しに辞めてほしいと伝えてくる場合は、落ち着いて冷静に対応しよう。困ったときは、各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)に問い合わせることを勧めている。

   働く妊婦には、男女雇用機会均等法などで、安全のためのさまざまな権利が与えられている。通勤時に満員電車で危険を感じる場合は、通勤緩和制度を利用して時間をずらすことも可能だ。

   事業主には、「女性の母性を尊重するための措置」をとる義務がある。1日30~60分程度の勤務時間の短縮を行っている企業もあるという。

   次は産休だ。労働基準法で、産前6週間(双子以上なら14週間)は妊婦の任意で、産後8週間は必ず女性を就業させてはいけない決まりになっている(産後6週間以降は特例あり)。これが「産休(産前休業・産後休業)」だ。正社員だけでなく契約、派遣、パート社員でも取ることができる(条件あり)。

   産休中、生活に困らないよう、「出産手当金」を受け取ることができる。支給額は日給の3分の2×休んだ日数。正社員でなくても、健康保険に加入していれば誰でも受け取ることができる。

   会社に妊娠報告をするときに、出産予定日と産休取得予定について話しておくとよい。産休の手続きをする時期は会社によるので、確認が必要だ。

10月から産後パパ育休制度がスタート

   子どもが生まれたら、今度は「育児休業(育休)」だ。希望すれば誰でも、子どもが1歳になるまでの間、取ることができる。子どもが保育所に入れないなどの理由があるときは、休業期間を1歳6カ月になる日まで延長できる。

   産休と同じように、正社員だけでなく契約、派遣、パート社員でも取ることができる。ただし以下の要件が必要だ。

・1年以上雇用されている(2022年4月撤廃予定。雇用期間は問われなくなる)
・子どもが1歳に達した後も引き続き雇用されることが見込まれる
・週の所定労働日数が3日以上ある

   育休中は「育児休業給付金」を受け取ることができる。目安は、月給15万円の人で月10万円(6カ月経過後は7.5万円)。

   産休と違うのは、男性も取得できることだ。とはいえ、厚生労働省によると、2020年度の男性の育休所得者はわずか12%程度で、ほとんどが2週間以内だ。国は男性にも育休を取ってもらうことで、女性の負担を軽くし、女性の社会進出を進めて労働力不足を補い、少子化も防ぎたいと、育児・介護休業法を改正した。

   そのポイントは、産後パパ育休(出生時育児休業)の創設と、育休を分割して取得することが可能になったことだ。

   産後パパ育休は、育休とは別に取得でき、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能だ。分割して2回取ることが可能だ。育休も分割して2回取ることができるようになった。いずれも2022年10月1日から実施されるので、この夏以降に出産を予定している家庭で検討してみたらどうだろう。

育休取得で「男性の意識」に変化が

   明治安田生命保険の調査(2021年8月)によると、育休を取得した0~6歳の子どもがいる男性では「育休取得により育児に関し良い変化があった」と答えた人が88.6%にのぼった。

   また「子育ての大変さがわかり、配偶者をもっとフォローしたいと思った」は半数近くあった(複数回答)。育休を取るか取らないかで、意識の変化に大きな差ができるようだ。

   ところで、育休に入る前には、丁寧な引き継ぎを心がけるよう呼び掛けている。

   第一に「早めに取り組む」こと。妊娠中は何があるかわからず、切迫早産で産休の予定より早く入院するなど、急な休みを取る可能性もあるからだ。業務フローや関係者リストなど、早めの引き継ぎ準備を心がけるとよい。

   また、その際、「口頭ではなく文書化する」ことが大切だ。自分が去った後のトラブルを防げるよう、情報を見える化しよう。

   そして、感謝の気持ちを込めた、休業前のあいさつも重要だ。口頭で伝えるだけではなく、社内には最終日、社外には最終出勤日の1週間程度前にあいさつメールを送ることを勧めている。

   メールには「誰に仕事を引き継いでいるのか」「いつからいつまで休業する予定でいるのか」を明記しておくとよい。

   夫は妻が今後どう働いていきたいのか、いつ復職したいのか、将来二人が目指すゴールはどこかについて話し合っておこう。また、主な家事・育児リストを列挙し、二人でどう分担するかを決めるのも大事だ。

   出産後、妻が夫の言動にイライラし、不仲になる「産後クライシス」もあり、なかには離婚まで至る夫婦もあるというから、気をつけよう。産後クライシスが、後年の熟年離婚につながるケースもある、と警告している。

   本書ではこのほか、保育園選びのチェックポイント、職場復帰後の乗り切り法、復職後の異動・転職について解説している。

   2022年4月の「改正女性活躍推進法」の全面施行によって、それまで301人以上の従業員規模の会社が対象であった「女性が働き続けやすい仕組みの整備」の義務化が、101人以上規模の会社まで拡大されることに、監修にあたった藤井佐和子さんは、注目している。

   女性が働きにくいと言われた中小企業でも、従来通りの対応で済ませることはできなくなるのだ。

   そして、「仕事も育児も目指すところに向けて、がんばりすぎずに歩みを進めていけますように」とエールを送っている。

(渡辺淳悦)

「がんばりすぎないお仕事復帰BOOK」
藤井佐和子、mamari監修
KADOKAWA
1540円(税込)