ニコンの一眼レフカメラの開発撤退報道...その後、「生産、販売、サポートは継続」と発表
一方、ニコンの一眼レフカメラの開発撤退は、公式発表ではなく、流動的なようだ。
発端は日本経済新聞が7月12日夕、「イブニングスクープ」としてネットメディアで発信したこと。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信などが追いかけた。
日経によると、ニコンは一眼レフカメラの開発から撤退。「1959年から60年以上にわたって一眼レフを手掛けプロの支持を集めてきたが、人工知能(AI)や画像処理技術を導入し市場で主流になりつつあるミラーレスカメラの開発に集中する。高精細な画質を備えたスマートフォンがカメラ市場を侵食しつつある。プロやコアなファン向けにスマホにはない機能を充実させてカメラの生き残りを目指す」という。
さらに日経は「ニコンは2020年6月に発売したプロ向けの旗艦機種『D6』以来、一眼レフの新製品を発売していなかった。コンパクトデジタルカメラの開発も終了し、今後はミラーレス機に一本化する。既存モデルは当面生産や販売を続ける」と報じた。一眼レフカメラ好きのニコンファンは、感慨深く「ニコン撤退」の記事を読んだことだろう。
ところが、ニコンは7月12日、
「本日、一部報道機関より、当社が一眼レフカメラ開発から撤退という報道がなされましたが、憶測によるもので、当社が発表したものではありません。デジタル一眼レフカメラの生産、販売、サポートは継続しており、お客様には引き続きご安心してご利用頂ければと思います」
とのコメントを発表した。
スズキのオートバイ最高峰のモータースポーツ参戦撤退は公式発表だが、ニコンの一眼レフ開発撤退は公式発表ではない。ただし、ニコンも一眼レフカメラの生産や販売の継続は約束していても、今後については明言を避けている。
今後について「ニコンは『開発は停止しているものの、今後再開する可能性もある』と説明。既存の商品の生産や販売、サポートなどは継続するとしている」(毎日新聞)など、ニコン側の言い分を丁寧に伝える報道もあった。
報道機関が先行して報じたニュースを企業が即日否定し、後日、結局は報道の通りになるケースは日常茶飯事だ。もちろん、例外はある。
公式発表のため観念せざるを得ないスズキファンに対し、一眼レフを愛するニコンファンは日経報道が誤報で、「今後の再開」を願っていることだろう。(ジャーナリスト 岩城諒)