若年層の「薬物犯罪」、大麻の乱用拡大が大問題...20歳未満検挙数、初の1000人台突入(鷲尾香一)

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   若年層による薬物犯罪が増加している。特に問題なのが大麻事犯で、20歳未満の検挙数が2021年に初めて1000人台に達した。若年層による大麻の乱用拡大が浮き彫りになる事態だ。厚生労働省が発表した「令和3年のわが国の薬物情勢にかかる統計指標」で明らかになった。

  • 「令和3年のわが国の薬物情勢にかかる統計指標」に注目(写真はイメージ)
    「令和3年のわが国の薬物情勢にかかる統計指標」に注目(写真はイメージ)
  • 「令和3年のわが国の薬物情勢にかかる統計指標」に注目(写真はイメージ)

薬物事犯全体は減少傾向、覚せい剤事犯も6年連続の減少

   発表によると、2021年の薬物事犯での検挙人数は1万4408人で、前年比159人(1.1%)減少した。

   減少の要因はとしては、覚せい剤事犯の検挙人数が前年比684人(7.9%)減少し、8000人を割り込んで7970人となったことがある。覚せい剤事犯は、6年連続で減少している。

   一方で検挙数の大幅な増加が続いているのが大麻事犯だ。大麻事犯は、前年比523人(9.9%)増加し、5783人となった。これは8年連続で増加し、過去最高となった=表1

   薬物の押収量としては、覚醒剤が前年比174.3㎏(21.1%)増加し998.7kgに、乾燥大麻が同78.1㎏(26.1%)増加し377.2kgに、それぞれ増加した。一方で、コカインは同806.6kg(98.1%)減少し15.1kgに、MDMAなど錠剤型合成麻薬が同2万5685錠(24.1%)減少し8万623錠に、それぞれ大幅に減少した。

   そして、何よりも懸念されるのが30歳未満の若年層の薬物事犯の増加だ。

   前述の通り、薬物事犯全体は減少傾向にある中で、30歳未満の覚せい剤事犯は前年比42人(3.8%)増加し1156人となった。

   20代は同26人(2.6%)増加し1041人に、20歳未満は16人(16.2%)増加し115人となった。すなわち、20歳未満が2年連続の増加し、若年層にまで覚せい剤が広がりつつあると言えるだろう。覚せい剤事犯の中には、13人の高校生と1人の中学生が含まれている=表2

大麻事犯は20代、20歳未満とも8年連続の増加

   だが、最も若年層への薬物汚染が進んでいるのが大麻だ。30歳未満の大麻事犯は、前年比432人(12.0%)増加し3934人となった。大麻事犯全体の5783人のうち、68.0%を30歳未満が占めている。

   20代は同322人(12.3%)増加し2934人になった。そして、20歳未満は101人(11.2%)増加し、初めて1000人に達した。20代、20歳未満とも8年連続の増加となっており、2ケタ以上の増加が続いている。

   大麻汚染は特に20歳未満に大きな広がりを見せており、高校生が前年比30人(18.9%)増加の189人含まれているほか、中学生も8人含まれている=表3

   入手の難易度によるものなのか、覚せい剤に比べて、若年層への大麻の拡散度合いは非常に高い状況が続いている。特に、高校生への拡大が顕著で、2014年にわずか18人だった検挙数は2021年には189人と10倍以上になった。この間、年率45.5%平均で増加したことになる。

   なお、覚せい剤事犯の再犯率は66.9%で、7970人の検挙者数に対して、5338人が再犯者だった。覚せい剤事犯の再犯率が低下したのは、15年ぶりのこと。

   こうした薬物乱用防止対策として、厚労省では厚労大臣を議長とし、関係閣僚で構成される薬物乱用対策推進会議により、「第五次薬物乱用防止五か年戦略」を推進している。

   同戦略では以下の5項目を目標に掲げている。

(1)青少年を中心とした広報・啓発を通じた国民全体の規範意識の向上による薬物乱用未然防止
(2)薬物乱用者に対する適切な治療と効果的な社会復帰支援による再乱用防止
(3)薬物密売組織の壊滅、末端乱用者に対する取締りの徹底及び多様化する乱用薬物等 に対する迅速な対応による薬物の流通阻止
(4)水際対策の徹底による薬物の密輸入阻止
(5)国際社会の一員としての国際連携・協力を通じた薬物乱用防止

   しかし、少なくとも(1)に掲げた青少年に対する取り組みは、薬物事犯の検挙数を見る限り、成果を上げているとは言えず、より一層の取り組みで青少年への薬物汚染を防ぐ必要がありそうだ。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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