男女の賃金格差が縮まれば「パワーカップル」続々誕生!
そして、コロナ禍にもかかわらず高収入のパワーカップルが増えている背景には、大きく次の3つの要因が考えられるという。
(1)コロナショックで非接触化が進展したため、主に接触型業務の対個人サービス業や流通業などへの影響が大きかったが、それ以外の業種への悪影響は比較的軽微だった。
(2)コロナショックで相対的に所得の低い非正規労働者の雇用機会が減少したが、相対的に所得水準の高い正規労働者への影響は限定的だった。
(3)オンライン化・EC(電子商取引)化が進展し、情報通信業や対事業所サービス業などを中心とした雇用・所得環境が逆に好転したため、若年層の所得が増加した。
永濱氏がここで特に強調するのは、(3)の情報通信業や対事業所サービス業で働く、若い世代の雇用・所得環境の好転だ。
「コロナショック後は感染拡大防止のために新しい生活様式が求められるようになり、オフィスの縮小やテレワーク等が推奨されてきた。そのため、ビジネス環境の変化やデジタル化に関連する分野では、逆にコロナ化で需要が拡大し、雇用・所得環境も好転していることがパワーカップルの増加に寄与していることが予想される」
図表4は、直近の2021年の年齢階層別に見た賃金変化率だ。全体では賃金が小幅低下する中で、10代から30代前半の若い世代の賃金が、軒並み上昇傾向にあることがわかる。
「いわゆる結婚適齢期の若年労働者の賃金が相対的に伸びており、かつ、これからもデジタル化に適応したこうした若年人材のニーズが高まることが予想されよう。しかし一方で、今後も若年層の労働力人口は減少することが人口動態的に確実である。となれば、今後も若年労働者の労働需給のひっ迫傾向が続き、男女の賃金格差がさらに縮まることになれば、パワーカップルの増加がさらに勢いを増す可能性すらあるだろう」
実際、男女の賃金格差が縮まれば高所得世帯の収入が増えることは、相関関係のグラフでも証明されている=図表5参照。だから、永濱氏はこう期待するのだった。
「女性の社会進出が進んで男女間の賃金格差が縮まる流れは、今後も長く続くと見込まれている。よって、『パワーカップル』はこれからもますます増加することが予想される。そして、そもそも結婚や家庭内における男女の関係など変化を前提として女性の社会進出が進んでいる状況にあるが、『パワーカップル』の増加が触媒となってさらに大きな変革をもたらすかもしれない」
(福田和郎)