プーチン大統領の逆襲で加速、「欧州経済の減速」 エコノミストが指摘「エネルギー不足」「ユーロ安」「イタリア危機」...今冬を乗り越えられるか?

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「ユーロ安」、止める手立てがないジレンマ

   同じく第一生命経済研究所主席エコノミストの田中理氏は、別のリポート「ユーロが20年振りのパリティ割れ」(7月14日付)の中で、急速に進む「ユーロ安」が欧州の経済減速をさらに加速させる、と指摘した。

   外国為替市場では、7月12日の取引時間中に一時0.9999ルまでユーロが下落、2002年以来20年ぶりのパリティ割れとなった。14日には1ユーロ=0.995ドルまで値下がりした=図表2参照

(図表2)ユーロの対ドル相場と米欧政策金利の推移(第一生命経済研究所の作成)
(図表2)ユーロの対ドル相場と米欧政策金利の推移(第一生命経済研究所の作成)

   田中氏はこう説明する。

「通貨安の進行は通常、輸出競争力の改善を通じて景気を押し上げる。だが、深刻な物価高騰に見舞われるユーロ圏では、ユーロ安による輸入物価の上昇が、家計の実質購買力の目減りや企業収益の圧迫を通じて景気を下押しする。また、資源価格の高騰とユーロ安進行は、貿易黒字の縮小(貿易赤字の拡大)につながる。ドイツの5月の貿易収支は、資源価格の高騰と割高なスポット市場でのLNG調達拡大から、1991年以来の赤字に転落した」
「貿易赤字の拡大は、海外への支払いに充てる外貨需要を高め、さらなるユーロ売りを招く側面もある。ECB(欧州中央銀行)は7月21日に11年振りの利上げ開始を予定しており、9月には利上げ幅を拡大する可能性を示唆している。
もっとも、ユーロ圏が深刻な景気後退に陥った場合、早晩、利上げ方針の修正を余儀なくされる。一段の物価高騰でECBが利上げペースを一旦加速させる可能性もあるが、その場合は景気のオーバーキル(過剰な景気引締め政策)が意識され、為替相場は先行きの利下げ転換を視野に入れよう。どちらに転んでもユーロ売り要因となる」

   つまり、さらなるユーロ安が避けられない、というわけだ。

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