資材・エネルギー価格の上昇&円安で、住宅価格上昇の可能性
このように、都内および首都圏の住宅市場の先行きは明るいと見ることもできますが、そこに影を落とすのが、やはり、ロシアのウクライナ侵攻の長期化に伴う資材・エネルギー価格の上昇と日米の経済政策の違いによる円安です。
世界的な鉄鉱石や原油・天然ガス、食糧・飼料の不足によるコストプッシュ型のインフレに対して、欧米各国は金融引き締め=金利引き上げによって対応しようとしています。
しかし日本は、国債発行額がG7の中でも1,000兆円と群を抜いて多く、金利を引き上げると海外の債権者への利払いが急激に増えることもあって、金融緩和政策を維持し続けています。
この金利差が円安を引き起こしている主な要因ですが、これは容易には解決できない課題です。したがって円安は継続し、その多くを輸入資材に依存する住宅産業はコストアップを受け入れざるを得ず、さらに住宅価格が上昇する可能性が高まっています。
ちなみに、日本の「消費者物価指数(CPI)」は2022年5月の総合で2.5%上昇しています。なかでも、電気やガスなどの光熱費は15.2ポイント、エネルギーは20.3ポイント(いずれも2020年対比)と急上昇しています。海外から供給される資源・エネルギー価格高騰の影響が明らかです。これに対して、「企業物価指数」は同じく5月に112.8ポイントと前年比9.1ポイント上昇しています。
サービスの価格を含む「CPI」と、物の価格だけを調査している「企業物価指数」を単純比較することはできませんが、企業が差分の6.6ポイントに相当する金額を、消費者にまだ転嫁できていないとも見ることができるでしょう。そのため、CPIは今後も上昇していく可能性が高いと考えておくべきです。
東京都の人口が回復し消費が拡大しても、住宅価格がさらに上昇することになれば、需要は減退し、市場は縮小を余儀なくされます。
参院選を大勝した政府・自民党の経済対策の策定および実施は、その意味でも待ったなしと言えるでしょう。
(中山登志朗)