第26回参議院選挙で、与党が大勝した。衆院を解散しない限り2025年までは国政選挙がなく、岸田文雄首相にとっては選挙を気にすることなく政策に打ち込める「黄金の3年間」を手にしたことになる。
「後ろ盾」安倍氏不在、「アベノミクス」軌道修正ありうるか?
「難局を乗り切るためには平時ではない、有事の政権運営が求められる。総理大臣たる私を中心に、政治がすべての責任を持って決断をし、行政を動かし、徹底的な実行を図る」
参院選から一夜明けた2022年7月11日、自民党本部で記者会見した岸田首相は新型コロナウイルス対応やロシアによるウクライナ侵攻、物価高への対応といった難題を乗り切るため、自身が先頭に立つと強調した。
首相が挙げたテーマはいずれも重い課題だが、参院選の勝利で長期政権が視野に入った岸田氏にとって、国民生活の安定が政権基盤の安定に不可欠という意味で、大きな試金石となるのが経済政策運営だ。具体的には、「アベノミクス」の軌道修正に手をつけるかどうかだろう。
投票日直前に銃撃で命を落とした安倍晋三元首相は岸田氏にとって、政権運営の重要な後ろ盾であると同時に、政策面では「岸田カラー」を封じる重しでもあった。
岸田派は、参院選前は党内第4派閥。岸田氏が首相の座に就けたのも、党内最大派閥である安倍派の支持があったからこそだ。
それだけに、安倍氏の意向は政策運営のさまざまな場面に反映された。
6月に閣議決定した「骨太の方針」に、防衛費を国内総生産(GDP)費2%に倍増させるなど、防衛強化に向けた具体的な方向性が明記されたのも安倍氏の働きかけによるものだ。