紛争解決制度は前進なく...「上級委員会」選任を拒否し続ける米国
WTOには、こうした国際的な貿易のルールを決めることとともに、加盟国間の紛争処理という重要な機能もある。
自国の利益第一で保護主義に走らないよう、たとえば関税などについて対立があれば、WTOに提訴できる裁判のような制度だ。しかし、これについては、今回の会議でほとんど前進が見られなかった。
この制度は、まず当事国の求めに応じて裁判の1審に当たる「小委員会(パネル)」が設置され、その決定に不満があるときは、上級審(最終審)にあたる「上級委員会」に申し立て、上級審の判断が最終的な決定になる。
このカギを握る上級委員会の委員選任を米国が拒否し続けている。
このため、2019年末から3年近く委員不在で機能停止状態にあり、現在20以上の通商紛争が宙に浮いている。米国も納得する制度改革が必要だが、今回の会議でも具体案が提示されず、2024年までに「十分に機能する紛争解決システムを実現するよう協議する」と記すにとどまった。