日立製作所、富士通、KDDIなどが導入した日本式ジョブ型雇用
日立製作所、富士通、KDDIの3社がそうした日本式ジョブ型御三家と呼ばれており、本書でも詳しく紹介している。
日立製作所は現在、売上高の半分を海外が占め、約社員30万人中14万人が海外人材となっており、ジョブ型雇用の考え方を導入することはグローバル進出の面でも重要となっている背景がある。
2021年4月からジョブ型雇用の運用を本格的に始め、2024年をめどにその定着を目指している。職務ごとに必要な能力やスキルを見える化する、300から400種類にもおよぶ職務記述書を導入。管理職のポジションや等級をランク付けする施策はすでに実施している。
また、採用に向けた新しい取り組みとして、ジョブ型雇用の仕組みを取り入れたインターンシップを2021年夏から実施。職務記述書で職務内容を学生に明示している。
職務は61にも及び、学生のやりたい仕事やイメージ、働き方などのマッチングを実現可能にする取り組みも始まっている。
こうした背景を踏まえ、日立の年間の採用のうち、経験者(中途)採用はすでに半数近くを占めている。2021年度入社では950人採用のうち経験者は400人にまで増えており、スキルや能力を持った適材適所の採用を進めていることがうかがえる。
富士通は2020年4月にジョブ型キャリアの導入を発表した。
国内グループ企業に勤める管理職1万5000人を対象にジョブ型の人事制度を導入し、一般社員6万5000人については労働組合との話し合いを経て、数年後の導入をめざすとしている。
特筆すべきは、これまでのやり方をすべて欧米式のジョブ型に合わせるわけではなく、日本式のジョブ型への移行であると記載されていることだ。
アウトプットがうまくできなかったとしても、富士通の評価制度では定額の給与は保証されており、そこに加わる形で業績連動分が加算される仕組みになっている。
チャレンジすることができる環境を会社が保証し、働き手は存分に個々の能力を発揮してほしいという意図が込められているという。
KDDIは、働いた時間ではなく成果や挑戦および能力を評価し、処遇へ反映することを目的にした新人事制度を2020年8月から導入した。
さらに、2021年4月に入社した新卒社員から一律の初任給制度を撤廃し、能力に応じた給与体系も導入した。テレワークと出社によるハイブリッドな働き方を実現する社内DXも柱の1つになっている。
「企業は、自社にあったジョブ型とは何かを読み解き、既存のシステムを一部踏襲するなどしてバランスのとれた形となるよう人事制度を作っている」と解説している。
こうした企業の変化に我々はどう対応したらいいのか。
そのためには、自分自身の特性を把握し、能力を強化していくことが不可欠だという。自己理解を深めるために、自分史(キャリアヒストリー)を書いたり、セルフ・ジョブ・ディスクリプションを作ったりすることを勧めている。
組織任せのキャリアから「自分任せ」のキャリアへと考え方を転換することが求められている。
(渡辺淳悦)
「ジョブ型時代を勝ち抜くキャリア戦略」
中川浩ほか著
秀和システム
1980円(税込)