「もったいない。年収700万円の妻が出世を拒否!」妻より収入低いという夫の投稿が炎上...「妻の稼ぎに乗っかる気?」批判殺到、専門家の判断は?(3)

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   「年収700万円の妻が出世を捨てようとしています。どうしたら翻意できるでしょうか」という夫の投稿が炎上している。

   金融機関総合職の有能な妻は、管理職への昇格が期待されていた。しかし、妻は「鬱(うつ)になりたくない」と拒否。それが年収500万円の夫にはもったいない。夫は妻を、自信を失くす「インポスター症候群」と思っているからだ。

   この投稿には「妻の稼ぎに乗っかる気?自分が出世すれば?」と批判が殺到している。夫には共感の余地がないのか、専門家の判断は?

  • 働き過ぎて鬱になりたくない(写真はイメージ)
    働き過ぎて鬱になりたくない(写真はイメージ)
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出世が大事か、プレイヤーでい続けることが大事か

   <「もったいない。年収700万円の妻が出世を拒否!」妻より収入低いという夫の投稿が炎上...「妻の稼ぎに乗っかる気?」批判殺到、専門家の判断は?(1)>および<「もったいない。年収700万円の妻が出世を拒否!」妻より収入低いという夫の投稿が炎上...「妻の稼ぎに乗っかる気?」批判殺到、専門家の判断は?(2)>の続きです。

――回答者の中には銀行員もおり、金融機関で女性がキャリアを積むことがいかに大変か説明する人もいました。また、高齢男性の中には「出世することだけがすべてではない。好きなことをやってきた男が一番生き生きとしている」という仕事観を述べる人もいましたね。

川上敬太郎さん「それは出世することが必ずしも幸せとは限らないという視点もある、と投稿者さんに伝えようとする真摯なアドバイスだと思います。もちろん、出世することが一番大事だと考える人もいると思いますが、プレイヤーとして仕事するほうが、充実感が得られて成果も出せるという人もいます。それはどちらが正しいと一概に決められることではなく、仕事に何を求めるかは人それぞれだということなのだと思います。
ただその一方、本当の希望というのは自分でもなかなかわかりづらいものです。価値観は一つではない、という前提に立った上で、妻の本当の希望はどこにあるのか、何がベストなのかを、投稿者は一緒になって考えるというスタンスが大切なのではないでしょうか」

「稼ぎの低い男に...」という批判には違和感

「妻より稼がないと...」という決めつけに違和感が(写真はイメージ)
「妻より稼がないと...」という決めつけに違和感が(写真はイメージ)

――なるほど。ただ、回答者の中には、夫が妻より収入が低いことをあげて、「自分がもっと稼げばよい」「高収入の妻に乗っかろうとしている」「稼ぎの低い男にモノをいう資格はない」とまで批判する人がいます。別の回答者が「皆さん、冷静になろうよ」とたしなめるケースもみられました。なぜここまで夫がバッシングを受けなくてはならないのでしょうか。

川上さん「投稿者さんが、妻の意思とは関係なく妻が出世することを望み、自分の意思を妻に押しつけようとしているのだとしたら、否定されてしかるべきだと思います。尊重されるべきは妻の意思だからです。
それと同様に、投稿者さんの意思と関係なく、一方的に『もっと稼げばいい』と投稿者さんに求める意見には違和感を覚えます。投稿者さんがもっと稼ぎたいかどうか、投稿者さんご自身の意思が尊重されるべきです。また、『妻に乗っかろうとしている』というのも一方的な決めつけであり、『稼ぎの低い男にモノをいう資格はない』という言い分は、稼ぎの多寡で発言権が決まるという乱暴な考え方だと感じます。
それに、今回の投稿内容で夫と妻が逆になっていた場合はどうなのかは気になるところです。もし投稿者さんが妻で、夫に対して昇格や昇給を求めた場合であっても『自分がもっと稼げばいい』『夫にたかろうとしている』『稼ぎの低い女にモノをいう資格はない』といった厳しい言葉が浴びせられるのでしょうか。
投稿者さんに厳しい言葉が浴びせられている背景には、家庭で家事を担うのは妻の役割だ、という思い込みがあるのと同様に、収入を獲得するのは夫の役割だという性別役割分業意識が働いている可能性があるようにも思います」

「大切なのは、妻にとって心地良い働き方」

出世を捨てて気楽に仕事をしたい(写真はイメージ)
出世を捨てて気楽に仕事をしたい(写真はイメージ)

――ごく一部ですが、夫の主張に共感する意見もありました。インポスター症候群によって出世を断ったため、どんどん会社で扱いづらい人、いわゆる「お局」のようになる女性を何人も見ました、といった意見です。

川上さん「それらも貴重なアドバイスだと思います。ただ、会社で扱いづらい人と思われてしまわないよう昇格の打診を受け入れた結果、返ってより強いストレスを受けてしまう可能性も否定できません。大切なのは、投稿者さんの妻にとって心地良い働き方はどのようなものかなのだと思います。
誰もが昇格や昇給を望んでいるわけではありません。出世はほどほどに、今の暮らしを続けていければ十分だと考えている人はたくさんいます。ご夫婦の収入を合わせると年収1200万円ですから、かなりの高額です。投稿者さんが望む年収額はどれくらいなのか。また、昇格によって得られるステータスなど、妻との間で価値観が一致しているのかどうかは気になるところです。
投稿者さんが一方的にご自身の価値観を妻に押しつけ、昇格や昇給を強く求めてしまうようだと、妻は負担に感じてしまうのではないでしょうか」

夫と妻で「最も幸せは状態」を一緒に作っていこう

何が一番心地よい働き方かみつけよう(写真はイメージ)
何が一番心地よい働き方かみつけよう(写真はイメージ)

――川上さんなら、ズバリ、夫と妻に対してどうアドバイスしますか。2人は今後どのように働き、かつ夫婦関係を築いていけばよいでしょうか。

川上さん「まず投稿者さんは、昇格及び昇給だけが幸せの条件ではないことを前提に、妻と『最も幸せな状態』について、目線合わせをされてはどうかと思います。その中で、投稿者さんご自身が望む姿と妻が望む姿との間のギャップが確認できれば、そのギャップを埋めるためにお互いが取るべき道筋が見えてくるように思います。
今はご夫婦合わせて年収1200万円ありますが、投稿者さんとしては、もっと世帯年収を増やしたいと思っているのかもしれません。その場合は、妻が昇格の打診を受け入れるのも一つですし、投稿者さんご自身が収入を増やす方法を考えるのも一つです。収入を増やす方法は、必ずしも昇格だけではありません。副業や投資などさまざまな方法があるはずです。
今回の投稿では、回答者のみなさんは投稿者さんに否定的なご意見が多かったですが、本気で妻のことを思いやる、配慮がある方だと感じます。ぜひ、ご夫婦がともに協力して、『最も幸せな状態』の実現という共通目標に向けて一緒に対応策を考えていただきたいと思います」

(福田和郎)

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