「年収700万円の妻が出世を捨てようとしています。どうしたら翻意できるでしょうか」という夫の投稿が炎上している。
金融機関総合職の有能な妻は、管理職への昇格が期待されていた。しかし、妻は「鬱（うつ）になりたくない」と拒否。それが年収500万円の夫にはもったいない。夫は妻を、自信を失くす「インポスター症候群」と思っているからだ。
この投稿には「妻の稼ぎに乗っかる気？自分が出世すれば？」と批判が殺到している。夫には共感の余地がないのか、専門家の判断は？
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働き過ぎて鬱になりたくない（写真はイメージ）
夫は年収500万円、妻は「働きすぎて鬱になりたくない」
話題になっているのは、女性向けサイト「発言小町」（2022年6月23日付）に載った「妻がキャリア（出世）を投げ捨てようとしています」というタイトルの男性からの投稿だ。男性の妻に関するこんな相談だ。
「大企業の金融機関の総合職勤めで周囲の覚えもめでたいため、望めば部長以上は目指せそうな妻が、管理職（課長）への昇格を「拒否」しているようです。あまりにもったいないので、何とか翻意させたいですが、何か妙案はないでしょうか？ 説得を試みようと理由を詳しく聞いたら、（1）上の役職に見合う実力がない、（2）働きすぎて鬱（うつ）になりたくない、（3）もう十分な稼ぎがある（妻700万円台＋私500万円台）から現状維持で十分、といいます」
管理職になるのは拒否します（写真はイメージ）
ところが、妻に仕事の話を聞くと、激務の部署や人気の部署から昇格の声がかかっており、「実力がない」と思っているのは本人だけ。妻はいわゆる「インポスター症候群」だと思うと書いている。「インポスター症候群」とは、自分の能力や実績を自分自身が認められない心理状態を指す。
仕事やプライベートで成功しても、「自分の実力ではなく、運が良かっただけ」「周囲のサポートがあったからにすぎない」と思い込み、自信を持てないのだ。男性より女性に多いといわれる。名前の由来となった「インポスター」（imposter）には、「周囲を欺く」「詐欺師」「偽物」の意味がある。
そして、投稿はこう続く。
「（働きすぎて鬱になりたくないについては、）昇格した同僚がパワハラ気質の上司に当たってしまい、メンタルを疲弊したという『事故』を目撃し『ああはなりたくない』と思ったことが大きいようですが、今も繁忙期には月数十時間の残業をしており、お世辞にも暇とは言えない働き方をしています。ひどい上司ばかりではないのが世の常ですし、その『危険』があるというだけで一生のキャリアを棒に振るのはリスク回避的すぎます」
つまり、せっかく能力があるのに、リスクを恐れすぎている、というわけだ。
「ここまで書くと、『子どもが沢山欲しいんじゃないの？』と思われるでしょうが、むしろ逆で、『子どもはあんまり欲しくない』と言っています。そうすると、（出世して得られる）数千万円ものお金を捨てる、合理的に説明のつく理由が思い当たりません」
何とか説得する方法はないだろうかと、女性読者が多いサイトに相談を持ち掛けたようだ。
「奥さんの働き方は、奥さん自身が選ぶべき」の声
なぜ妻は出世を拒否するのか悩む夫（写真はイメージ）
この投稿には、「奥さんの働き方は奥さん自身が選ぶべき。夫が口出すことではない」と、投稿者への批判が洪水のように殺到した。
「激務の部署で鬱になりたくない。別に断る正当な理由だと思いますが。そもそも投稿者は何故妻に出世して欲しいのですか？本人が出世したいのを応援したいならともかく無理強いする権利はないと思います」
「奥さんを本当に想っているのなら、なぜ強制したいの？ 彼女が明確な理由を述べているのに出世を望むのはどうなのかな。逆に投稿者さんがそこまで出世（お金）に拘る理由はなんですか？鬱になってから後悔しても遅いと思います。もっと彼女を理解する努力をしたほうが賢明だと思うな。奥さんが可哀想」
「あなたが奥様より稼げるように出世したら？」と感情的反発
出世を期待されても困ります（写真はイメージ）
とくに多かったのが「妻の収入に乗っかろうとしている」「あなたが妻より稼げるように出世したら？ 話はそれから」といった感情的反発だった。
「妻が大切なのか、妻の『稼ぎ』が大切なのか？（中略）奥様が『稼げるはず』のお金が惜しいなら、あなたご自身が転職なり出世なりして『稼いで』、奥様に『ほら！できるんだよ！』ってみせてあげてはどうでしょう？」
「妻はあなたの説得など考えていませんよ。口出し無用、うだつが上がらないヤツは黙っていろという内容を、理性的に伝えてくれているのです。（中略）まずは家事をすべて請け負って、妻が家庭で寛げるようにしてみては？ その上で、仕事を頑張って欲しい、全力で支えるから出世してほしいって頼んでみたら？世の奥様はそうやって旦那を持ち上げて出世してもらうのですよ」
「奥様はさらに裕福になることより、心の余裕を優先させて、あなたとの生活を維持することのほうが幸せなのでは？ あまり欲をかくと捨てられますよ」
「頭がいい奥様ですね。金融で今出世してもいいことはない」の意見
金融機関の女性管理職は大変だ（写真はイメージ）
金融機関経験者からも投稿者の妻に共感を寄せる意見が相次いだ。
「頭がいい奥様ですね。長い目で見て、ここで昇進してもかえって自分のクビを締めるだけのことに気が付いている。凡人は出世に目がくらんで、こうしたリスクヘッジができないものです。
2008年の金融危機の際、アメリカで働いていました。金融機関では多くのディレクターたちの首が切られました。それに、日本の組織で女性が出世していくのは並大抵ではありません。男の嫉妬ほど怖いものはない。見えないところで足を引っ張られます。金融はこれから経営が極めて厳しくなる（すでになっている）業界です。経営が傾いてくれば、給料の高い人から出向に出されます。つまり、奥様にとって今、出世してもいいことなんてないのですよ」
一方で、投稿者の妻が「鬱になること」を心配していることを実体験から共感する意見もあった。
「奥様が出世する道を選んだとして、あなたはどう協力するの？ （会社役員で年収も多い夫は）鬱です。大変ですよー、伴侶がメンタルやられると。家事やその他、あなたがフォローする覚悟ありますか？ ちなみに夫は次期社長とされていましたが、お断りして創業者の身内の方を新たにお迎えしました。（中略）夫は鬱とうまく付き合いながら仕事しています。私は夫にいつ仕事を辞めてもらっても構わないと言っています。体を壊すぐらいなら家でのんびり犬と過ごして欲しい」
今回の妻のキャリア（出世）に関する話題について、さまざまな意見が寄せられています――。＜「もったいない。年収700万円の妻が出世を拒否！」妻より収入低いという夫の投稿が炎上...「妻の稼ぎに乗っかる気？」批判殺到、専門家の判断は？（2）＞に続きます。
（福田和郎）