非鉄金属国内最大手、三菱マテリアルの株価がさえない。2022年7月4日の東京株式市場では一時、前週末終値比70円(3.6%)安の1854円まで下落、約1年8か月ぶりの安値をつけた。
その後は一進一退を繰り返しているが、上昇基調をたどる兆しは見えない。米国をはじめとする世界経済の減速懸念から、銅など三菱マテリアルの扱う非鉄金属の価格が足元で下落しており、業績への悪影響を懸念する売りが収まらない格好だ。
FRBの利上げなどで需要減? 金属価格軒並み下落
米連邦制度準備理事会(FRB)によるインフレ封じ込めのための果敢な利上げやウクライナ情勢の悪化、中国の過剰とも言える新型コロナ対応策などによって、世界経済が減速する可能性が投資家の間でささやかれている。
現状、実体経済で需要減が起きているかは見方が分かれるが、そうした懸念を背景に、足元で金属価格が下落している。
価格形成に影響力のあるロンドン金属取引所(LME)では、アルミ以外の金属の3か月先物価格は過去3か月でおおむね3割前後下落している。三菱マテリアルの主力である銅は、3月の高値から2割程度安くなっている。
野村証券は2022年7月8日に配信した、金属価格の非鉄・電線業界に与える影響をまとめたリポートでは、「EV(電動車)バッテリー用途等で需要が伸びるニッケルは相対的に価格が底堅いと見ているが、ごく短期では各金属価格が一段と下落するリスクがある」と指摘した。
証券各社の投資判断引き下げ...逆風続きの銅ビジネス
もともと三菱マテリアルは2023年3月期連結決算の業績予想について、銅山の減産や前期のアルミ事業売却による収益の減少などを踏まえ、減収減益としている。売上高は前期比12.2%減の1兆5900億円、営業利益は31.7%減の360億円、最終利益は55.6%減の200億円という具合だ。
この業績予想には、ウクライナ情勢の悪化による欧州経済の停滞なども勘案しているようだが、米国の景気後退懸念による銅価格下落までは視野に入れていなかったようだ。
こうしたこともあって証券各社では最近、目標株価を下げる動きが相次いでいる。とくにモルガン・スタンレーMUFG証券は、7月4日配信のリポートで、投資判断を3段階の真ん中から最下位の「アンダーウエート」に格下げした。
野村証券とメリルリンチ証券は7月に入って目標株価を引き下げた。野村は「高機能製品が全社の成長を牽引する状況はまだ見えず、投資魅力にはやや乏しい」と指摘した。
銅ビジネスをめぐっては、左派の大統領が誕生したチリの政府が銅鉱山への課税強化を行う方針であるなど、別の逆風も吹いている。
三菱マテリアルの株価が反転攻勢に出るには近年進めてきたリストラをさらに徹底し、稼ぐ体質をより明確にする必要がありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)