国内の自動車用市販タイヤの販売が鈍化している。ブリヂストン、住友ゴム工業、横浜ゴムが今春、原材料価格の高騰を理由に相次ぎ、出荷価格を引き上げたことが背景にある。
くわえて、ロシアのウクライナ侵攻の影響でトップメーカーのブリヂストンは2022年6月24日、市販用タイヤの出荷価格を9月に3~8%引き上げると発表した。22年になってからの値上げは4月に続き、2回目となる異例の事態だ。
値上げ前の2月・3月、タイヤ販売本数は2桁の伸び率
調査会社「GfK Japan」(本社・東京都中野区)は、全国のカー用品店、タイヤ専門店、ガソリンスタンド、ホームセンター、インターネットの販売実績データをもとに、自動車用タイヤの販売動向を集計している。
GfK Japanによると、2022年3月のタイヤ全体の税抜き平均価格は8819円だったのに対し、4月は9546円と約8%上昇した。5月も9504円と高止まりが続いている。店頭販売、インターネット販売ともに価格が上昇している。
ダンロップブランドの住友ゴム工業が2021年12月、乗用車やバンなどのタイヤを3月から約10%値上げすると発表し、実施。横浜ゴムとブリヂストンも22年1月に値上げを発表し、それぞれ4月から、横浜ゴムは最大9%、ブリヂストンは乗用車で平均7%、トラック・バスで同8%の値上げを行った。
値上げの理由について、ブリヂストンは「近年、天然ゴムをはじめとするタイヤ原材料の価格が高騰している。生産性向上などの改善を行ったが、企業努力のみでこれを吸収することは困難と判断した」と説明した。
値上げで販売数量はどうなったか。
2月のタイヤ販売本数は前年同月比26%増、3月は34%増だったのに対し、値上げ後の4月と5月はいずれも6%増と、売れ行きが鈍化した。このデータから、タイヤ販売は3月に特需が発生し、4月以降はその反動が出ていることがわかる。
タイヤのサイズ別で最も販売本数の多い155/65/14は、3月に前年同月比65%増となったものの、4月と5月はいずれも16%増にとどまった。数値の上では4月以降も堅調といえるが、値上げ前の3月に駆け込み需要があったことがうかがえる。
今後、ライバルメーカーの値上げも必至?
2月下旬のロシアによるウクライナ侵攻を受け、世界的に一段とインフレが加速するとの懸念が高まり、タイヤ価格がさらに上昇することになった。
前述の通り、ブリヂストンが6月、国内の市販用タイヤの9月値上げを発表したのだ。同社は「ウクライナ情勢の緊迫化を背景とした原油価格の高騰はさらに進行しており、タイヤ原材料価格に加え、生産・供給に関わるエネルギー費にも大きな影響を与えている。これらの状況を踏まえ、今回の決定となった」と説明している。
住友ゴム、横浜ゴムなどライバルメーカーの値上げも必至だ。春の値上げの際の販売動向を参考にすると、秋の値上げ前の8月に向け、7月から再び駆け込み需要の特需が起きる可能性もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)