視聴者に不快感を与えない広告手法は、ますます必要ではないか――。こんな課題意識のもと、カカクコムグループのガイエ(東京都千代田区)では、視聴者やユーザーに避けられがちな広告視聴の実態改善を目的として、「嫌われない、新しい広告の形」がテーマの「プロダクトプレイスメントに関する認識、実態把握調査」を実施。2022年7月8日に調査結果を発表した。
ブランディングの手法として、映画やテレビなどの映像コンテンツ内に広告情報や商品情報を入れ込む広告手法のことを、「プロダクトプレイスメント」と呼ぶ。今回の調査で明らかになった、プロダクトプレイスメントの広告手法の可能性とは――。
「動画内に広告が含まれるので、動画を中断する広告が少なくなる」
近年、テレビ、PC、スマートフォンなど、さまざまなデバイスで動画を見るようになったが、視聴中、いわゆる「枠」「差し込み」型の手法による広告を目にする機会が増えた。その一方で、有料動画配信サービスでは、広告などによる新たな収益を獲得することは課題のひとつだ。しかも、媒体側が確保できる広告枠の限界、デジタル媒体におけるCookie規制など、広告業界はこれまでとは異なる問題も抱えている。
こうした背景があるなかで、同社は「視聴者に不快感を与えない広告手法がますます必要」、「広告視聴の実態を、快適な見せ方によって改善できないか?」という発想から、「プロダクトプレイスメント」の手法に着目した。「嫌われない、有益かつ快適な広告の見せ方」を模索するなかで見出した。
今回の調査は、海外ではすでに運用されている広告手法の「デジタル・プレイスメント」(撮影後の映像に、デジタル技術で商品や広告を露出する仕組み)の日本での普及なども念頭に、取り組んだ。
まずは、「広告への印象」について聞いた。具体的には、「テレビCM」、「Web・インターネット広告(動画以外)」、「動画広告(YouTube、TikTokなど)」「合成画像を広告要素として商品・商材をシーン内に入れる広告」、「映画館などで本編前などに上映される広告」の5つの広告の印象を確認した。その結果、次のような傾向があったという=図表1参照。
・テレビCMは「商品または企業の認知度が向上する」「商品またはサービスを買ってみたくなる」「情報を信用できる」「商品または企業のイメージが向上する」など、ポジティブな印象のスコアが5つの広告において相対的に高い。
・Web・インターネット広告(動画以外)および動画広告(YouTube、TikTokなど)は「広告が不快である」とネガティブな印象のスコアが高い。
・合成画像を広告要素として商品・商材をシーン内に入れる広告に対しては、「商品または企業の認知度が向上する」(約17%)、「情報が新鮮である」(約13%)、「有益である」(約13%)、「商品または企業のイメージが向上する」(約12%)など、ポジティブな印象がいずれも1割以上あり上位に挙がる。
調査では次いで、「プレイスメント化された動画」と「プレイスメント化されていない動画」を視聴したうえで、前者(プレイスメント化された動画)を視聴する場合の気持ち(受容性)、プレイスメント技術についてどう思うか(魅力度)、プレイスメント技術の特徴のうち魅力を感じる点(特長)について質問した。
その結果、「受容性」では、プレイスメント化された動画を「不快に感じないと思う」(15.5%)、「あまり不快に感じないと思う」(37.7%)で、計53.2%がポジティブな回答だった。「魅力度」に関しては、「魅力的だと思う」(10%)、「やや魅力的だと思う」(29%)で、計39%が好意的だった=図表2、3参照。
そして、「特長」について、ポジティブな意見が多かった順に見ると、「動画内に広告が含まれるので、動画を中断する広告が少なくなる」(「魅力的だと思う」「やや魅力的だと思う」の合計57.2%)、「動画内に広告が含まれることで、有料動画サービスを無料で見られるようになる」(同・合計55.1%)、「商品・商材が自然に取り扱われているので、ストーリーを邪魔しない」(同・53.4%)、「広告を強制的に魅せられている気がしない」(同・45.3%)という結果だった=図表4参照。
また、「テレビCM」、「テレビ番組での商品・商材紹介」、「動画広告(YouTube、TikTokなど)」、「映画で登場した商品・商材」をそれぞれ見たあとの行動についても聞いた。それによると、いずれの視聴後も「商品についてWebで検索した」が最も高かった。次いで、「友人・知人・家族と商品を話題にした」、「商品のホームページを見た」などが続く結果が得られている=図表5参照。
今回の調査を通じて、同社は
「本調査の結果から、『枠』『差し込み』型に捕らわれてきた今までの広告配信の形から動画コンテンツを活用した『コンテンツ内に広告情報や商品情報を入れる』プロダクトプレイスメント手法も有効であることが分かりました。
今後のブランディング広告を検討するうえで、プロダクトプレイスメント、とくに、新しい技術であるデジタル・プレイスメントには新しい広告手法の可能性があると想定しています」
とコメントしている。
なお、調査は2022年5月18日~5月20日、15歳~69歳の男女を対象に、マクロミルモニターに対するオンライン上でアンケート調査をおこなった(調査委託先:株式会社マクロミル)。有効回答数は1109サンプル。