参院選挙後、岸田政権の目玉政策「経済安全保障」に企業冷ややか...「関係ない」「分からない」半数以上

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「基幹インフラ安全性」と「サプライチェーン強靱化」を求める声

   さて、帝国データバンクでは、まず経済安全保障法の4本柱のうち、「自社の企業活動にとって最も関係があると思う項目はどれか」を聞くと、「基幹インフラの安全性・信頼性の確保」(20.9%)がトップとなり、次いで「サプライチェーンの強靱化」(18.0%)が続いた。「官民の先端技術協力」(4.9%)、「特許出願の非公開化」(1.5%)はいずれも5%未満となり、自社に関係するとみている企業は少なかった=図表2参照。

(図表2)経済安全保障法の自社への影響(帝国データバンクの作成)
(図表2)経済安全保障法の自社への影響(帝国データバンクの作成)

   また、全体の半分以上である54.8%が「関係はないと思う(24.6%)」「分からない(30.2%)」と答えたことが目につく。とくに、中小企業では「関係はないと思う」「分からない」の合計が63.2%と6割以上にのぼった。同法が5月11日に成立してから2023年の段階的な施行まで半年以上あることや、具体的な内容が示されていないため、多くの企業が自社との関係性を図りかねている結果となった。

   回答が特に多かった「基幹インフラの安全性・信頼性の確保」と「サプライチェーンの強靱化」に限って企業を規模別にみると、いずれも規模の大きい企業ほど、同法が自社の経済活動に関係すると考えている割合が高かった=図表3参照。

(図表3)経済安全保障法の自社への影響~規模別、業界別(帝国データバンクの作成)
(図表3)経済安全保障法の自社への影響~規模別、業界別(帝国データバンクの作成)

   業界別では、「基幹インフラの安全性・信頼性の確保」の割合が最も高かったのは、『金融』の28.4%だった。以下、『サービス』(26.1%)、『建設』(25.7%)、『運輸・倉庫』(22.4%)が 20%を超えた。「サプライチェーンの強靱化」の割合が最も高かったのは、『製造』で27.1%。次いで、『卸売』(22.0%)、『農・ 林・水産』(18.7%)が続いた=再び、図表3参照。

   経済安全保障法については、全国の企業からさまざまな意見が寄せられている。

半導体は多くの製品の命だ(写真はイメージ)
半導体は多くの製品の命だ(写真はイメージ)
「製造業にとって基幹インフラの安全性・信頼性は非常に重要であり、特に電気・ガス・水道の供給不安が起こった場合には事業継続が難しい状況になる」(水産食料品製造、茨城県)
「商品のスムーズな流通や、輸送費の安定化、交通インフラの安全性が確保されることが必須であり、流通に関わる人材の確保も欠かせない」(酒類卸売、北海道)
「国民の生存に不可欠な物資である国産の農作物に対して、農業者の収入や農作物の価格を補償する制度を期待する」(施設野菜作農業、長崎県)
「中国や東南アジアの工場からの住宅建材輸入が一部滞っている。建材メーカーは生産現場の国内回帰を促進したほうが良い」(不動産代理・仲介、愛媛県)
サプライチェーンのカギを握るコンテナ船
サプライチェーンのカギを握るコンテナ船
「ロシアやウクライナが苦慮する事象を見ると、食糧やエネルギーの強靱化や安全保障が一番大事だと思う」(食料品製造、北海道)
「電子部品の入手難で製品の出荷遅れが発生しており、サプライチェーンの強靭化は避けて通れない。基幹インフラは、電力の供給問題と通信インフラのサイバー攻撃対策が喫緊の課題」(電子応用装置製造、大阪府)
「海外に依存しているサプライチェーンを国内へ回帰すれば自社の仕事の営業チャンスが増えるので期待する」(製缶板金、熊本県)
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