2025年以降、「高齢者のフリーランス」も増えるのか?!

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   日本には現在、341万人から390万人ほどのフリーランスがいると言われている。なにをするのも「自己責任」と言われるフリーランス。「どうやって生きていけばいいの?」と悩む新人フリーランスに先輩フリーランスら16人がアドバイスしたのが、本書「フリーランスの進路相談室」(KADOKAWA)である。

「フリーランスの進路相談室」(Workship MAGAZINE監修・協力)KADOKAWA

   監修にあたったWorkship MAGAZINE(ワークシップマガジン)は、日本最大級のフリーランス向けウェブメディア。エンジニア、デザイナー、マーケター、ライターなど、デジタル系専門職のフリーランスに役立つ情報を提供している。本書も連載に加筆修正したものだ。

「新しいチャレンジ」フリーアナウンサー・登坂淳一さんの場合

   最初に登場するのは元NHKアナウンサーで、現在はフリーアナウンサーの登坂淳一さん。登坂さんは1997年にNHKに入局。「おはよう日本」などを担当し、「麿」の愛称で親しまれていた。2018年に退局し、現在はバラエティー番組への出演やYouTubeでの発信など、活躍の場を広げている。

   登坂さんがフリーになったのは、妹の死をきっかけに、自分の人生についても考えるようになり、「後悔なく生きるために、新しいチャレンジをしたい」と考えたからだという。そのタイミングで、いま所属している事務所から声をかけてもらえた。

   フリーになりバラエティー番組に出るようになったが、ニュース番組とは作法がまったく違うので、どうしたらいいかわからないことはたくさんあるが、「新しいことにチャレンジしている証拠」と前向きに考えているという。

   その一方で、新しい挑戦をするには、「それまで持っていたものを手放す覚悟が必要」と冷静に割り切っている。NHKの看板の恩恵は大きかったが、自分の固有名詞で可能性を広げていく現在の日々に満足しているようだ。

フリーランスが抱えがちな「3つのトラブルとリスク」

   フリーランスが抱えがちな「3つのトラブルとリスク」について、フリーランス協会の平田麻莉さんが話している。「仕事上のトラブル」としては、報酬の未払いや減額、支払い遅延、ハラスメントなどがる。「仕事上のリスク」としては、低い報酬で働くことを余儀なくされたり、長時間労働に陥ったりすること。「生活健康のリスク」として、出産・育児・介護などの際のセーフティーネットが十分ではない現状があるという。

   平田さんは、それらのトラブルやリスクを一人ですべて背負う必要はない、として小規模企業共済制度、国民年金基金、公的窓口の「フリーランス・トラブル110番」などフリーランスを支える制度の活用を呼び掛けている。

   また、フリーランス協会がフリーランス向けに保険や福利厚生などを含めた「ベネフィットプラン」を提供していることを紹介している。

   2023年10月1日から「インボイス制度」が導入されると、免税事業者である多くのフリーランスは免税事業者でいられなくなる可能性があり、「フリーランスいじめ」ではないかと危惧されているそうだ。しかし、平田さんは、今まで消費税を払わない「益税」がないと食べていけないというのであれば、「そもそも報酬の金額が間違っている」と問題提起している。

   フリーランスも税金を正しく請求して納めるからこそ、社会保障などセーフティーネットの整備につながる、と考えている。

   2025年には定年を延長できなかった人たちの多くがフリーランスになる可能性があるという。「高齢者のフリーランス」が今後どんどん増えていくので、行政や企業はフリーランスの受け皿を整える方向に向かう、と見ている。

   一方で、フリーランスは若い世代のものと思っていたが、これからは年代に関係なくフリーランスが増えていきそうだ。

   アメリカでは全労働人口の35%がフリーランスという調査もある。IT化の進展によって独立・開業・副業のハードルが大幅に下がり、スマホ1台あれば仕事ができるようになったことなどが背景にあり、フリーランスが増えていくのは世界的な流れのようだ。

「フリーランス、40歳の壁」とは?

   フリーランスというと、自分の好きなように働くことを選んだ人たち、というイメージがあるが、なかには「会社員という働き方がなじまなかった人」もいる。漫画原作者、編集者の竹熊健太郎さんは、そんな「フリーランスにならざるを得ない人」を取り上げた「フリーランス、40歳の壁」という著書がある。

   「40歳の壁」とは、「依頼元が年下になっていくことで仕事が振られづらくなる」ことによって、仕事が減っていくことを指している。竹熊さんの知り合いで成功しているフリーランスは、たいてい30代でベストセラーや、なんらかの賞を受賞した作品といった「自分の代表作」をつくっているという。そうすると、だいたい10年は食べていけるようになるとも。「自分の得意目録を持つことが生存確率を高める」と話している。

   本書ではほかに、税理士の大河内薫さんがフリーランスのセルフブランディングについて、メディアアーティストの市原えつこさんがメンタルの調子の保ち方について、ライターの永井勇成さんが大きな病気になったときの対応について話すなど、フリーランスの具体的な悩みの相談に乗っている。

(渡辺淳悦)

「フリーランスの進路相談室」
Workship MAGAZINE監修・協力
KADOKAWA
1650円(税込)

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