グリーンファイナンスとデジタルを核とした再起動に期待
本書のもう1つの視点である日本の金融史との関連を整理すると、小泉純一郎政権で不良債権処理を任せられた竹中平蔵氏(金融担当相)が求めた銀行の自己資本比率アップが、最初の大きな足かせになったようだ。
そこで、取引先企業など3400社に1兆円増資を引き受けてもらった。公的資金の注入はまぬがれたものの、メインバンクとしての発言力は落ちた、と見ている。
また、リーマン・ショックでみずほは、邦銀最大の損失を出した。米モルガン・スタンレーに90億ドル(9000億円)資本参加した三菱UFJフィナンシャル・グループは、その後、モルガンから大きな収益を得ている(21年3月期の連結純利益7770億円のうち2952億円はモルガンの貢献分)。みずほにもモルガンからの支援要請はあったが、現実的に財務余力はなかったという。
最後に、河浪さんはみずほ迷走の原因として、統合後のグランドビジョンがなかったこと、旧3行の縄張り争い、大企業が持つ「無謬主義」の3つを挙げている。
そのうえで、新社長になった木原氏には、グリーンファイナンスとデジタルを核とした、みずほの再起動を期待している。
戦後の高度成長期、日本は、銀行からの「間接金融」が主体で、銀行は預金を集めて融資を増やせば自動的に利益が出た。日本の銀行には「経営」はなかった、と厳しく指摘している。「みずほの再生プランは、日本の金融再生そのものの絵姿になろう」と結んでいる。
(渡辺淳悦)
「みずほ、迷走の20年」
河浪武史著
日本経済新聞出版
1760円(税込)