万能なスキルなど存在しない
筆者である私は、アセスメントが専門で、いくつかのコーチング資格作成にたずさわっていたことがあります。コーチングの特性について、考察をおこなってみましょう。
小学生や中学生時代、みなさんのなかには、嫌な先生に教えてもらうことが苦痛だった経験がありませんか。しかし、コーチングにおいては、そういうことでは務まりません。
コーチングでは個人の内面にアプローチを試みるため、キャリアの棚卸しなど他人には知られたくないような事柄も含んでいることが少なくありません。理解しておかなくてはいけないのは、テクニックやスキルではなく、信頼関係が最も重要な点であることです。
コーチングの目的は多岐に渡りますが、力量に個人差があることや、力量が水準に達しない場合、表面的なスキルの寄せ集めとなるため効果が限定的になります。さらに、資格の種類は異なったとしても、ベースのテクニックやスキルは非常に酷似しているので、やはり使い手の力量に影響されます。
あらゆる場面を想定し上手くまとめているため、力量が伴わないと、運用が難しくなります。ひとつの手法を「魔法の杖」のごとく提唱している人が目につくことがあります。しかし、万能ではないことを理解しなければいけません。美しいスマートなコーチングというよりは、個人の内面にフォーカスできなければ意味がないのです。
部下は、自分が「貢献できている」「成長している」と感じたときに、仕事へのモチベーションが最も高まります。部下の能力を引き出し、組織のパフォーマンスを向上させるためには何が必要か――。本書とともに、考えてみてはいかがでしょうか。
(尾藤克之)