景気は本当に回復途上? 日銀短観6月調査を深読み エコノミストが警戒...今そこにある「歴史的物価高」の危機

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コストプッシュ型インフレで企業の採算性悪化

   こうした状況を「コストプッシュ型インフレ」と呼び、「企業の景況感を下押ししている」と警戒するのが第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏だ。

   熊野氏のリポート「景況感の悪化が進む~2022年6月短観~」(7月1日付)では、こう指摘している。

「大企業・製造業の販売価格DIは、前回比プラス10ポイントの上昇であった。この上昇幅は、1987年9月以来約35年ぶりの大きなものである。(中略)現在は歴史的な局面にあると言える。こうした販売価格の引き上げは、価格転嫁が進んでいる証拠でもあるが、まだ必ずしも採算を改善させるまでには至っていないようだ。(中略)円安・資源高によって、いくら値上げをしても追いつかない位のコストプッシュ・インフレが起こっていて、これも企業の景況感を下押ししているとみられる」

   もう1つ、熊野氏が注目したのが、大企業・製造業のマインドが悪化したことだ。それが、今後の売上計画を示す「経常利益計画」に表れているという=図表2参照。上野氏はこう述べている。

(図表2)大企業・製造業の経常利益計画の推移(第一生命経済研究所の作成)
(図表2)大企業・製造業の経常利益計画の推移(第一生命経済研究所の作成)
「少し意外だったのは経常利益計画である。2022 年度は、大企業・製造業でプラス2.6%とごく僅かな上方修正幅だった。年度計画では前年比マイナス7.9%の減益を見込んでいる(再び、図表2参照)。本来は、円安効果でもっと利益の上積みがあってもおかしくない。そうならなかった理由は、コストプッシュ・インフレで採算性が悪化しているからだろう。(中略)需要拡大が冴えない中では、価格転嫁による採算確保が難しく、それが各種の企業アンケートで『円安はマイナス』という結果になっている背景でもあるのだろう」
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