イーロン・マスク氏の「予言」で議論再燃...東洋経済「人口減サバイバル」、ダイヤモンド「5年後の業界地図」、エコノミスト「資源ショック」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

  • 人口減の問題を取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)
    人口減の問題を取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)
  • 人口減の問題を取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)

参院選後には「年金危機」が迫っている

   「週刊東洋経済」(2022年7月9日号)の特集は、「人口減サバイバル」。コロナ禍で少子化と人口減少の現実が再燃し、参院選後には「年金危機」が迫っていると警告している。

   今年(2022年)5月、米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が「出生率が死亡率を超えるような変化がない限り、日本はいずれ消滅するだろう」とツイッターに投稿したつぶやきは、日本の人口減の議論を再燃させた、と書き出している。

   6月に公表された2021年の出生数は81万人と、過去最少を記録した。合計特殊出生率は前年比0.03ポイント低下の1.30と、過去4番目の低さだった。出生率の低下が「将来も年金はもらえるのか」という「年金破綻論」に火をつけるのではないか、と危惧している。

   標準モデル世帯の所得代替率(現役世代の手取り収入額に対する年金額の比率)が、下限の50%以上を維持できるかがポイントになるという。

   2023年2月頃、政府が将来推計人口を1年遅れで公表、2024年春には政府が5年に1度の年金財政検証を公表するスケジュールになっている。

   今回の参院選で自民党が選挙に勝てば、念願の長期政権の座を手にし、「黄金の3年」になると言われているが、社会保障問題によって追い込まれ、「悪夢の3年」になる可能性もあるというのだ。

◆「かかりつけ医」の制度化とは

   もう1つ、選挙後に本格化しそうなのが、「かかりつけ医」の制度化だ。現在の日本の医療システムは世界でもまれなフリーアクセスになっている。どの病院や診療所に行くかは患者が自由に決めることができる。

   政府が目指す海外式のプライマリーケアにおけるかかりつけ医は、診療科に関係なく、心身の健康について、日常的・総合的に相談に乗ったり診たりする。

   患者の側からすれば、プライマリーケアでは外来医療の入り口が、かかりつけ医に一本化されることを意味する。かかりつけ医では手に負えない症状や重大な病気が見つかれば、大病院や専門医へ患者を紹介・転送する。

   超高齢社会で医療資源が不足することが予想されるため、プライマリーケアの導入によって、医療機関の機能分担や効率化を図るのが狙いだ。しかし、日本医師会は収入源を招くと警戒し、経営の自由を守るため反対の姿勢を示している。

   さまざまな対談やインタビューが載っているなかで、注目したのが、「子育て負担を減らせば街の商売人も儲かる」という見出しがついた兵庫県明石市の泉房穂市長のインタビューだ。

   明石市は9年連続で人口が増加。2020年の出生率は1.62と国の1.33を大きく上回り、「東の流山市、西の明石市」と呼ばれるほど子育て世代に人気の街だという。

   泉市長は13年から段階的に、医療費、保育料、おむつ、給食費、遊び場の「5つの無料化」を始め、明石に住めば金がかからないようにしたのが大きい、と話している。

   子育て層の負担を軽くしたら、貯金に回るのではなく、地域に金を落として経済が回るようになったという。施策のため、おもに土木費を削って財源をねん出した。

   国には一時のばらまきではないリアリティーのある政策を実行してほしい、と期待している。

   日本の少子化の根本原因は何なのか? 家族社会学が専門の山田昌弘・中央大学教授は「子どもを持つほど高リスクなことはない。将来『人並み』の生活が成り立たなくなるリスクがあれば、結婚も出産も控える。これが少子化の根本原因」と話す。

   もうこのまま少子化を受け入れざるをえないのかもしれない、と悲観的だ。

5年後に大化けしそうな企業は?

   「週刊ダイヤモンド」(2022年7月9日号)は、「5年後の業界地図」と題した特集を組んでいる。13業界400社の業績を予想している。いくつか業界をピックアップして紹介しよう。

   デジタルトランスフォーメーション(DX)の追い風が吹くITベンダー業界では、二極化が進み、主役は売上高数兆円規模の超大手企業群になっているという予想を紹介している。

   NEC、富士通、NTTデータ、野村総合研究所、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、TISの6社は有望で、グローバル展開が期待できるという。一方、新興企業群は先行者メリットを喪失している可能性があるとも。

   電子部品業界では、今後5年で「大化け」しそうなダークホース2社を挙げている。パワー半導体の車載向け需要が高まっているロームと、自動車・産業機器向けコネクターが主力のヒロセ電機だ。村田製作所や日本電産が業界内で最も有望な一群であることは間違いないが、ダークホース的なこれら2社は株価の上値余地が大きいという。

   不動産・住宅業界は資材価格の高騰という新たな難問に直面しているが、コロナ後を見据えて強気の中期経営計画を発表した企業も目立つ。SMBC日興証券の田澤淳一シニアアナリストが注目するのが、三井不動産、東急不動産ホールディングス、大和ハウス工業の3社だ。

   三井不動産は、オフィス、商業、物流とポートフォリオが分散しているのが特徴で、大型開発が進む東京・八重洲など成長ドライバーが豊富だという。

   東急不動産も24年3月期に予定されている複数の渋谷再開発プロジェクトも順調で、利益貢献が期待できる。

   住宅では大和ハウスが27年3月期の営業利益目標を5000億円とする中期経営計画を発表。4年で43%の増益を見込んでいる。最新の物流施設を造って売却するビジネスが成長している。

   こうした「業界地図」とは別に、5期先の予想で選んだ成長株、割安株、高配当株を紹介している。

   「5期先までの高成長が期待できる株ランキング80」の1位になったのはマクケア。新サービスや新商品のテスト販売のプラットフォームの展開が主力で、市場は5期先の当期利益を今期比で約21倍になると予想している。3位のティーケーピーは貸会議室などを運営。5期先の当期利益は今期比10倍超と予想している。

   一方の割安株では、3位に楽天グループが登場したことに注目している。モバイル事業の巨額損失で赤字が続いているが、金融やECは好調を維持。市場予想通りの展開になれば、株価の劇的な復活もあるかもしれない、としている。

   また5期先の高配当株ランキングの26位までは配当利回り6%超になっている。日経平均株価の配当利回りは2%台前半なので、かなり高い水準だ。

   「業界地図」に登場した企業では、三井住友ファイナンシャルグループ、大和ハウス工業などが両ランキングに登場している。いずれも、業績好調にもかかわらず、株価に割安感があり、増配を見込んでいる。

冬には都市ガス不足の危機も

   「週刊エコノミスト」(2022年7月12日号)の特集は、「止まらないインフレ 資源ショック」。このところ、同誌はインフレ関連の特集を続け、警告を発している。

   原油、天然ガス、小麦の国際取引価格は、いずれもコロナ禍から経済が回復し始めて以降、急上昇している。

   エネルギー問題に詳しい国際大学の橘川武郎教授は、「今、エネルギー政策の方向性を大胆に一から変えないといけないくらいのインパクトが起きている」と指摘。「資源」安全保障政策を見直すべきときに来ているという。

   ロシアは三菱商事と三井物産が資本参加しているサハリン2の権利見直しを表明したが、仮に、サハリン2からの天然ガス供給(日本向けはLNG年約600万トン)をストップすれば、日本はその減少分を長期契約の10倍の価格とされるスポット契約で、他から調達しなければならず、その追加調達コストは1.8兆円になると、庄司太郎氏(中立地帯研究所代表・元アラビア石油取締役)は見ている。日本の電気・ガス料金はさらに高騰することになるだろう。

   また、米国フリーポート天然ガス液化基地の火災事故(6月8日発生)の影響も深刻だ。

   ここからは、大阪ガスとJERAが年232万トンずつ輸入している。この状況でサハリン2からの供給が止まれば、日本のLNG輸入量7500万トンのうち、1000万トンを失うことになる。天然ガス備蓄のない日本は、エネルギー安全保障上、最大の危機を迎えるかもしれないという。

   冬には都市ガスが不足する事態も予想される。「節電」は経験しているが、「節ガス」の経験はない日本。ロシア・ウクライナ戦争は日本人の生活にも大きな影を落としそうだ。

(渡辺淳悦)

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