冬には都市ガス不足の危機も
「週刊エコノミスト」(2022年7月12日号)の特集は、「止まらないインフレ 資源ショック」。このところ、同誌はインフレ関連の特集を続け、警告を発している。
原油、天然ガス、小麦の国際取引価格は、いずれもコロナ禍から経済が回復し始めて以降、急上昇している。
エネルギー問題に詳しい国際大学の橘川武郎教授は、「今、エネルギー政策の方向性を大胆に一から変えないといけないくらいのインパクトが起きている」と指摘。「資源」安全保障政策を見直すべきときに来ているという。
ロシアは三菱商事と三井物産が資本参加しているサハリン2の権利見直しを表明したが、仮に、サハリン2からの天然ガス供給(日本向けはLNG年約600万トン)をストップすれば、日本はその減少分を長期契約の10倍の価格とされるスポット契約で、他から調達しなければならず、その追加調達コストは1.8兆円になると、庄司太郎氏(中立地帯研究所代表・元アラビア石油取締役)は見ている。日本の電気・ガス料金はさらに高騰することになるだろう。
また、米国フリーポート天然ガス液化基地の火災事故(6月8日発生)の影響も深刻だ。
ここからは、大阪ガスとJERAが年232万トンずつ輸入している。この状況でサハリン2からの供給が止まれば、日本のLNG輸入量7500万トンのうち、1000万トンを失うことになる。天然ガス備蓄のない日本は、エネルギー安全保障上、最大の危機を迎えるかもしれないという。
冬には都市ガスが不足する事態も予想される。「節電」は経験しているが、「節ガス」の経験はない日本。ロシア・ウクライナ戦争は日本人の生活にも大きな影を落としそうだ。
(渡辺淳悦)