「ハローキティ」などのキャラクタービジネスを展開するサンリオの株価が2022年6月30日の東京株式市場で一時、前日終値比408円(15.0%)高の3120円まで急伸した。
前日に中国の電子商取引大手、アリババのグループ企業アリフィッシュ社と中国大陸におけるライセンス契約を結ぶと発表しており、中国市場の開拓への期待が高まった。株価は約6年8か月ぶりの高値水準で、その後も値崩れはしていない。
注力するライセンスビジネス、中国市場で展開へ
まずは、ライセンス契約の内容を確認しておこう。契約期間は2023年1月1日から5年間。対象はハローキティのほか、マイメロディ、シナモロール、ぐでたま、けろけろけろっぴなど26キャラクターで、サンリオの主要キャラクターを網羅している。
この契約によってアリフィッシュ社は、サンリオキャラクターをデザインした商品の中国大陸における製造・販売、さらにそのライセンスを行う独占的権利を取得する。サンリオ側はアリフィッシュ社が独占的権利の行使によって得る収益の一定割合について、アリフィッシュ社からロイヤリティを受ける。
サンリオは「中国は人口約14億人、GDP(国内総生産)世界2位で当社にとって将来が期待できる市場の1つ」と指摘したうえで、「中国を代表するITプラットフォーマーであるアリババグループのアリフィッシュ社とライセンス契約を結び、中国大陸市場におけるサンリオブランド・キャラクター価値の向上を目指す」と説明している。
サンリオは基本的にキャラクターグッズなどを自社生産せず、ライセンスビジネスを行うことで一貫しており、今回の契約もその方針に沿ったものだ。
22年3月期決算は25億円の営業黒字に転換
サンリオの業績は2022年3月期連結決算で営業損益が25億円の黒字(前期は32億円の赤字)と黒字転換を果たした。コロナ禍が続いて、「サンリオピューロランド」のようなテーマパーク事業はなお厳しかったが、セブン-イレブンの「シナモロールくじ」などコンビニ分野の収益が拡大したことなどが貢献。反転攻勢を強める態勢が整いつつある。
大和証券は2022年3月期業績を受けた5月17日配信のリポートで、目標株価を2500円から2650円に引き上げ、「国内外ともに回復基調にある」と評価していた。
サンリオは国内の売上高が全体の4分の3程度と太宗を占めるが、海外でも健闘している。主にアジア、米国、欧州で展開しており、米国ではレディー・ガガのような著名人にも愛好され、一定の知名度を有している。
アジアでは中国大陸がメイン市場で香港、台湾、韓国が続く格好だが、なお中国大陸での成長余地が大きいとみられていた。それだけに、アリババグループと組むことによるビジネス拡大に投資家の期待が高まっている。(ジャーナリスト 済田経夫)