ゲームチェンジャーとなるか?! 日産と三菱自の軽EV、出足好調...なぜこれほど人気? 価格、使い勝手はどうか?

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   日産自動車の軽の電気自動車(EV)「サクラ」の受注が、2022年5月20日の発表から約3週間で1万1000台を突破した。日産はサクラの月間販売目標を明らかにしていないが、EVで1万1000台超の受注は前例のない大ヒットといえる。

  • 日産自動車の軽EV「サクラ」(プレスリリースから)
    日産自動車の軽EV「サクラ」(プレスリリースから)
  • 日産自動車の軽EV「サクラ」(プレスリリースから)

セカンドカーとしての購入意向強い

   日産が「軽のゲームチェンジャー」を目指すサクラは6月16日に販売を開始したが、事前の先行受注は同13日までに1万1429台となった。

   日産とともに新型軽EVを共同開発した三菱自動車工業も、姉妹車の「eKクロスEV」を16日に発売。三菱自によると、5月20日の発表から同じく約3週間の受注が約3400台(6月12日時点)となり、月販売目標850台の4倍になった。

   日産はサクラについて「2台目以降の複数所有車の方、以前からEVに興味をお持ちの方の代替えが多い」とコメント。三菱自もeKクロスEVについて「家族で複数のクルマを所有しているお客様を中心に注文をいただいている」としており、セカンドカーとして新型の軽EVを購入する傾向が強いことがわかった。

   購入する年齢層は、日産サクラの場合、60代が26%で最も多く、50代が24%、70代以上が21%と続くなど、シニア層が多かった。

気になる価格は? 背中押す「補助金」の存在

三菱自動車工業の軽EV「eKクロスEV」(プレスリリースから)
三菱自動車工業の軽EV「eKクロスEV」(プレスリリースから)

   この軽EVの出足をどう評価すべきか――。

   2022年5月の軽の月間販売のトップ3は、首位がスズキスペーシアの8670台、2位がホンダN-BOXの8631台、3位がダイハツムーヴの6070台となっている(全国軽自動車協会連合会調べ)。22年1~5月の累計で最も売れたのはホンダN-BOXの8万8799台で、月間平均では約1万7000台。

   ホンダN-BOXの人気は、2位のスズキスペーシア(22年1~5月の累計で3万8895台)をダブルスコア以上で圧倒している。日産サクラの受注実績(3週間で1万1429台)は、ホンダN-BOXに迫る勢いで、今後もこのペースが続けば、軽の首位争いを演じる可能性もある。

   日産サクラの人気は、補助金込みの価格にあるのは間違いない。

   サクラのメーカー希望小売価格は、239万円台と294万円台。軽としては高額だ。ところが、国の補助金55万円、エコカー減税1万5600円に加え、東京都の場合、さらに45万円の補助金があり、優遇策の合計は101万円5600円となる。

   これは実質的な値引きであり、130万円台でサクラが買える計算になる。これならガソリンエンジンの軽と負担は変わらない。姉妹車のeKクロスEVも同様だ。

普段使いには十分だが、気になるのは長距離ドライブ

   ただし、問題は、実際にサクラやeKクロスEVを購入した後のユーザーの評価だろう。いずれもリチウムイオン電池の容量は20キロワット時で、満充電当たりの航続距離(WLTCモード)は最大180キロだ。

   新型軽EVの充電時間は、電池容量の80%まで急速充電で約40分。同100%まで普通充電で約8時間かかる。近所の買い物や毎日の通勤に使い、帰宅後に自宅で充電できるのであれば、不満はないだろう。

   しかし、マンションなど充電設備がないユーザーは、近所で充電スタンドを探さなければならない。週末のショッピングセンターや自動車ディーラーの急速充電器は、時間帯によって渋滞することもあり、不便さを感じることだろう。これから日本でもEVが増えるのであれば、なおさらだ。

   航続距離180キロでは、高速道路を走行するような長距離ドライブは使いにくい。それでも、軽EVをセカンドカーとして使うのであれば、家族との長距離ドライブはファーストカーに任せればよい。

   電池の劣化という問題もある。EVを10年以上使えば、リチウムイオン電池の航続距離が短くなるなど、不都合が生じるだろう。ただ、この点も近距離移動のセカンドカーであれば、さほど不便さを感じないかもしれない。

   その意味で、軽のEVをセカンドカーとして使うメリットはありそうだ。日産が主張するように、ユーザーの使い勝手しだいでは、ガソリン車の軽を凌駕するゲームチェンジャーとなる可能性がある。

   果たして、日産と三菱自の軽EVの快進撃は続くのか。最も脅威を感じ、販売動向を気にしているのは、スズキやダイハツ工業など軽のライバルメーカーに違いない。(ジャーナリスト 岩城諒)

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