日本企業の稼ぐ力は過去最高に高まっているとして、株価の上昇を予測しているのが、本書「日経平均は4万円になる!」(宝島社新書)である。著名ストラテジストが挙げる本格復活の理由を読むと、元気が出てくる。
「日経平均は4万円になる!」(武者陵司著)宝島社新書
著者の武者陵司さんは、大和総研アメリカ・チーフアナリスト、ドイツ証券副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを経て独立。現在、株式会社武者リサーチ代表。ビジネス誌の経済予測記事などに、しばしば登場する著名ストラテジストだ。著書に「アフターコロナ V字回復する世界経済」などがある。
12年間で4.37倍になった日本株
円安が進み、日本経済への悲観論ばかりが語られる中、本書の楽観論は注目すべきだろう。その論拠を読むうちに、日本株への期待が高まってくる。
冒頭、武者さんは「今こそ日本人は自信を取り戻すべき」とゲキを飛ばしている。冷静に過去を振り返ると、日本の最悪期はずいぶんと昔のことだったというのだ。
日経平均がバブル崩壊後につけた最安値は2009年3月10日の7054円であるのに対し、直近の高値は2021年9月14日の3万795円で、この12年間で日本株は4.37倍(年率13.1%増)になった。米国株を除けば、このパフォーマンスは世界で優等の部類に入る。
「株式資本主義」が進化し、時価総額が将来の投資方針を決めるようになった。日本の株式市場における時価総額トップ20社の変遷(2000~2021年)を表で示している。
武者さんが「ネクストGAFAM時代における日本のリーディング企業」に格付けした企業は、2015年まで時価総額上位20社の中に2社しかランクインしていなかった。
しかし、2021年12月時点では、ソニー、キーエンス、リクルート、東京エレクトロン、ソフトバンク、信越化学、日本電産、ダイキン工業、任天堂、ファーストリテイリング、HOYA、村田製作所の12社まで拡大している。
銀行や重厚長大産業、自動車、電機企業などではなく、GAFAMにも対抗できるビジネスモデルを持つ新たな大企業に担い手が変わってきた、と指摘している。
米国の日本叩きで、「よい製品を安く売る」メカニズムが破綻し、競合が存在しない分野を開発し、独り勝ちを収めるオンリーワンにビジネスモデルを転換できた企業が伸びている。
その結果、日本企業の利益率は劇的に上昇しているという。高度成長期から2008年のリーマン・ショック前後に至るまで、日本企業の売上高経常利益率は2~4%で推移してきた。
ところが2021年9月の財務省「法人企業統計」(同年4~6月分)では、全産業(除く金融・保険)で7.7%、製造業で10.5%、と、過去をはるかにしのぐ最高水準に達した。
海外メディアやエコノミスト、海外投資家は持続性に疑問を呈したが、武者さんは違った。
限界利益率が急伸し、損益分岐点が劇的に低下していることに注目した。日本企業の価格支配力が飛躍的に高まっていること、グローバリゼーションに伴う海外部門の利益寄与の高まりの2点が、限界利益率の上昇につながった、と見ている。