記録破りの猛暑に襲われるニッポン列島。今年は「食品値上げラッシュ」のダブルパンチに見舞われる憂鬱な夏になりそうだ。
帝国データバンクは2022年6月30日、「『食品主要105社』価格改定動向調査(7月)」を発表したが、7月には約1600品目が値上げされる予定で、年内累計は2万品目を超える勢いだという。
6月初めの集計時と比べて約4000以上も増え、上げ幅は全体で平均13%になる。ここにきて値上げ品目数が急上昇した背景には円安の加速がある。
値上げの背景...原油高に伴う各コストの高騰、急激な円安
「値上げラッシュ」が今夏以降、本格化する見通しだ。帝国データが主要食品メーカー105社に今年1月以降値上げした品目を聞くと、6月30日までに累計1万5257品目に達した。前回調査(6月1日時点)から1か月でさらに約5000品目増えた計算だ。
今後の値上げ予定を調べると、7月だけで1588品目にのぼる。8月も2000品目超が予定されており、7・8月の2か月で約4000品目が値上げされることになる。
さながら「値上げの夏」の様相を呈してきた。しかも、値上げの勢いは秋口以降も止まる気配がみられず、10月も単月としては年内最多となる3000品目超で値上げ計画が明らかになっている=図表1参照。
各品目の値上げ率(最大値)は平均で13%となり、前回調査(6月1日)から変動はないが、夏~秋以降には値上げ幅が拡大傾向にある。
その背景としては、夏以降の値上げ要因に、原油高に伴う包装資材や容器、物流費の高騰に加えて、急激な円安による影響を挙げたケースが多かった。今年5月頃までは小麦など原材料価格の高騰が値上げの主な理由だったが、最近は急激な円安や原油高による輸入・物流コストの上昇へと変化している。
食品分野別に値上げ品目をみると、最も多いのは加工食品で6712品目に達している。前月から2000品目超増加し、全品目のうち唯一6000品目を超えている=図表2参照。北米でのスケソウダラ漁不振によるすり身価格の上昇などが主な理由だ。このため、白身フライなどの冷凍食品や水産加工品の値上げが相次いだ。
食パン・ハムなど、2回以上値上げ目立つ
値上げ率も平均15%に達している。8月以降は食材価格に加え、原油高に伴う物流コスト、急激な円安による輸入コストの上昇分を価格に転嫁する動きが出るため、さらない上がる見込みだ。
加工食品に次いで目立つのが、酒類・飲料(3585 品目)。前月から約1300品目増えたほか、値上げ率も平均15%に達した。ビール類では麦芽・トウモロコシなどの価格上昇が、清涼飲料水ではペットボトルなど包装資材の価格高騰が響き、秋口以降一斉に値上げされる。また、ドレッシング、マヨネーズなどの調味料が2627品目、スナック、チョコレート、アイスクリームなどのお菓子も939品目値上げされる=図表3参照。
また、食パンやハム、缶詰などで年内に2回以上値上げをする品目が多いことも特徴の1つだ。食用油のように昨年4月からを含めると6回も値上げするものもある。
帝国データバンクでは、
「夏以降は原材料費の上昇に加え、急激に進んだ円安による輸入コストの上昇を主な値上げ理由とするケースが目立ってきた。1ドル130円台を『既定路線』として受け止め、これらの相場を前提とした価格設定を決断していることも、8月以降に値上げペースが加速する要因となっている」
「今年初めに値上げを行っている企業・品目では、現在の為替水準を前提としていないケースが多く、既に再値上げ・再再値上げといった動きが足元で進んでいる。そのため、値上げは秋口にかけてさらに増加し、年内で累計 2万品目を超える可能性が高い」
と分析している。
(福田和郎)