第4節の暗号資産バトルは、北海道大学、明治大学、東京大学がそろって慎重な構えだった。やや上昇気配が見えた相場だったが、北大の花野直樹さんは急落の可能性もあるとみて、「底」を探るべく、前回の仮想通貨バブルを検証した。
「方向感のつかめない相場」に、明大の城正人さん、東京大学の迫嵩明さんは慎重な姿勢で臨んだが、取引は見送った。
仮想通貨の底はいつ?(北海道大学 花野直樹さん)
今週(2022年6月20日週)は株価指数の反発もあり、仮想通貨の相場も上昇しました。自分はまだまだ下落トレンドの途中であり、急落する可能性を考えて、今週もノーポジ(ション)でした。
ただ、一週間が終わりフタを開けてみるとチャートは下値を切り上げて底堅く推移しました。日足MACD(マックディー)がゴールデンクロスなども出ており、一時的には仮想通貨も上がっていくのかもしれません。
ここで、仮想通貨の底についての考察を話したいと思います。SNSなどネット上を見てみると、ビットコイン(BTC)は「3万ドルで買い」「200週MA(移動平均線)で反発する」「2万ドルが大底」などという声が多かったように思います。しかし、それらの水準をあっさりした抜けしてしまいました(2万ドルを割ってからは、底という声は少なくなったようです)。
では、いったい底はどこなのか? それを考察するために前回の仮想通貨バブルの底を見てみましょう。
1000ドル以下だったビットコインは2017年初あたりから急騰し、12月に最高値1万9000ドルを付けた後、1年間かけて80%下落しました。2017年バブルの底と言ったら、この水準になるでしょう。そして、その水準でボラティリティがない状態が5か月ほど続きました=図の黄色い四角。短絡的ですがこの値動きを今年の下落に当てはめると、ビットコインは昨年の高値から80%落ちの1万3000ドルが底になります。なにより言いたいのが底を抜けて上がっていくのに1年以上かかるということです。ネットを見ていると、あたかも底を打ったらV字で上がっていくかのような意見がありますが、マクロ経済の環境的にもそれはないんじゃないかと思います。
トレードバトルでこれを言ったら身もフタもありませんが、今年の仮想通貨現物はうまみがないんじゃないかと思います。
◆ 来週は戦略を変更
最後に来週からの戦略を変更したいと思います。今までの僕のルールだと、トレードバトルが始まって約1か月まったくエントリータイミングがありませんでした。(笑)ショート(売り)のタイミングはあったのですが、現物なのでできませんでした。
今年はトレードをしないほうが資金は減らない。つまり、暗号資産バトルで勝てるという可能性も十分あるんじゃないかと思うのですが、それだと面白くないので1時間以下の足を使った短期トレードをしたいと思います。
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
6月25日現在 1万円
◆ 池田昇太のワンポイントアドバイス
今回の仮想通貨市場の暴落は、2018年の仮想通貨バブル崩壊を想起させますね。当時の下落相場を分析すれば、今後の相場もまだまだ下落し続ける可能性はあるでしょう。
気になるのは上昇トレンドに転じるタイミングですよね。たしかに前回のバブル崩壊を見ると、価格が上向きになるまで時間がかかっています。しかし、2017~2018年と比べると現在は仮想通貨市場に機関投資家が増えていますし、Web3やNFTなどの流行によって、仮想通貨・ブロックチェーンへの関心度も高めですので、前回のバブルよりも相場が上向きになるのは速い可能性もあります。
しばらくは短期トレードを続けながら、長期的にトレンドが転換するタイミングを見計らいたいですね。
北大金融研究会の所属。ふだんはテクニカル分析を使った株式の短期トレードをしています。やるからには1位をとれるよう、頑張ります!
ポジションをとるタイミングを狙って......(明治大学 城正人さん)
今週(6月20日週)は「マイクロストラテジー 追証に?」というトピックが話題になりました。ビットコインを大量に保有しているマイクロストラテジー(MSTR)は、2021年には大きな評価益を計上し、大量にビットコインの買い増しを続けてきましたが価格急落により窮地に追いやられているようです。今回はなぜこのような状況になったのかご紹介します。
◆ MSTRの借入金
MSTRのFY2022 1Q(2022年3月期第1四半期)決算説明資料によると、Silvergate Bankからおよそ2000万ドルを借入れているようです。担保として差し入れられたのは3万3575枚のビットコイン。借入当時の評価額でおよそ8000万ドル。つまり借入金に対する担保比率は25%とかなり安全なレートで借入れていました。
担保比率が50%を割った時点で追加担保を差し入れるという契約になっており、契約した際から価格が半分になり担保比率が50%を割ってしてしまったため、追加の担保が必要という状況になりました。
しかし、MSTRの保有する12万枚を超えるビットコインのうち、現在担保となっているのは4分の1の約3万枚。「追加担保の差し入れが必要」とのインパクトある言葉と比較するとまだまだ担保には余裕もあり、それほど緊急事態ではないといえるでしょう。
しかし、MSTRのビットコイン平均取得単価は1枚当たり3万ドル、12億ドルの含み損を抱えた状況です。投資を行う際にはまだまだ厳しい展開が続く可能性があることも認識しておきましょう。
◆ ビットコインに積極的なあの国は......
ここまでビットコインに積極的な投資をしている企業MSTRを紹介しましたが、最後にビットコインに積極的に投資するこの国を紹介しないわけにはいかないでしょう。その国とはズバリ、エルサルバドルです。
エルサルバドルはちょうど1年前、全国民に30ドル相当のビットコインが配布されたことでも話題となった国です。
ブケレ大統領のツイートから推測した記事によると、エルサルバドルは取得単価4万5299万ドルで2301枚を保有。現在評価額は5200万ドルを超えるとも推測されています。
取得単価が非常に高く財政状況を揺るがす事態になっていないのかと心配になりますが、政府の保有する外貨準備高はおよそ30億ドルもあり、あれほど積極的な姿勢を取る割にはしっかりリスクを抑えた冷静な取引をしていると言えるかもしれません。
強い産業が存在しない、新興国だけにデジタルアセットの分野に集中投資、今後ビットコインシティなどの建設も予定しているということで、なんだかワクワクしますね!
◆ 今週の取引
今週は横バイで推移し、下に抜けるか上に抜けるかというせめぎ合いでした。なかなか方向感のつかない、取引なしという結果になりました。
それでは、また来週!
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
6月25日現在 9816円
◆ 池田昇太のワンポイントアドバイス
ここ数か月の下落相場によって、ビットコインに投資していた企業の含み損が大きくなりました。マイクロストラテジーやエルサルバドルの他に、テスラでも同様のことが発生していますが、含み損を抱えているものの、ビットコインを売らずに保有し続けていますので、ビットコインへの期待度は現在も高いと推察されます。
しばらく仮想通貨の市場は低迷し続け、ビットコインの売却やVCの崩壊など続く可能性も考えられますが、市場価格が上昇に転じたところでうまくポジションを取りたいところです。
2021年に引き続き、出場します! 投資対象として仮想通貨に興味を持つも、その技術の持つポテンシャルに惹かれDapp開発に着手。投資家としてだけでなく、開発者としての視点からの投資戦略も立てていきます!
Twitter: https://twitter.com/dennoah_jo
今週も様子見でした(東京大学 迫嵩明さん)
今週(6月20日週)は学業が多忙だったことや、先週に続き仮想通貨相場の動向が読みづらかったこともあり、様子見しました。
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
6月25日現在 1万円
学生投資連合USIC代表
高校3年生の時に株式投資のおもしろさに目覚める。日本株、米国株、仮想通貨投資を行う。長期的に伸びる市場でビジネスを展開している企業に長期投資することをモットーとしており、テンバガーを虎視眈々と狙っている。 金融を学ぶ「おもしろさ」、投資を始める「意義」を多くの人に知ってほしいと切に願う。
学生投資連合USIC:https://www.usic2008.org/
◆ ◆ アドバイザーのプロフィール
フリーランスのWebディレクター。金融系メディアを対象に執筆やディレクター業務に従事。投資歴7年。FXと仮想通貨をメインにトレードしています。ファンダメンタル分析よりかはテクニカル分析を好む。最近はNFT(非代替性トークン)の詐欺事例、法的問題について関心あり。
大学対抗戦「暗号資産バトル」競技ルール
・元本は1万円。
・通貨の選定は自由。ただし、国内の事業者で買える暗号資産に限定。
・レバレッジはかけられません。
・20%を超えて下げた場合は、強制的に取引を停止(ロスカット)とする。
・元本割れは1回まで。2回、資産を失った場合は、その時点でリタイアとする。
・運用期間は6か月。最終週時点での資産増減額で順位を決める。
学生投資連合USIC
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/