「これで終わりとは思えない」 SMBC日興証券の相場操縦事件、社員が警戒を強めるワケ

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顧客離れで業績への打撃、グループ内での地位低下深刻

   事件はSMBC日興証券の将来を大きく左右する恐れもある。

   事件で顧客離れが進んだ影響で、2022年3月期連結決算は収益が100億円程度、下押しされたと推計される。

   監督官庁である金融庁は、証券取引等監視委員会による検査内容などを踏まえ、今夏にも業務改善命令などの行政処分を出す方向。23年3月期決算は、さらに下押しされる見通しだ。

   業績以上に深刻なのがグループ内での地位低下だ。

   同社は三井住友フィナンシャルグループ(FG)の中核企業の一つ。しかし、調査報告書発表の前日、三井住友FGはインターネット金融大手SBIホールディングスとの資本業務提携を発表した。

   三井住友FGがSBI株の約10%を握り、長年、グループの「弱点」と言われてきたネット証券の強化を進める方針だ。

   ネット証券の強化は本来、SMBC日興証券が進めるべき分野だが、今回の提携に同社の名前はなかった。

   「三井住友FGは、不祥事が続き当面、業務の正常化が見込めない日興を見限り、証券分野の中核をSBIに切り替えるつもりではないか」。金融界にはこんな観測も流れる。

   近藤社長は2022年6月24日の記者会見で自身の進退について「三井住友FGなどと協議し、私自身の責任を含めて所在をはっきりさせていく」と述べ、早期の引責辞任は否定した。

   ただ、顧客離れが止まらない現状を打破するのは容易ではない。行政処分が厳しい内容になれば、業績への打撃はさらに深刻になる。

   ライバル証券大手から「あまりに稚拙」とあきれられた相場操縦事件は、SMBC日興証券の経営を揺るがし、金融業界の大再編のきっかけとなる可能性も秘める。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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