「プラスチック資源循環促進法」が、2022年4月に施行された。コンビニエンスストアやカフェなどで、無償で大量に提供されるプラスチック製のスプーンやフォーク、ストローなどを削減していくため、企業はなにかしらの措置を講ずる必要が生じる。その取り組みが不十分の場合には、企業名や店舗名の公表や勧告の対象になるとされる。
環境月間だった6月。いま、プラスチックごみの削減やリサイクルの促進に、化学メーカーのカネカが開発したカネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet(R)」が注目されている。持続可能な循環型社会の構築とプラスチック汚染問題の解決が目的だ。
プラスチックストローの素材に100%バイオマス由来の原料
プラスチックごみの削減とリサイクルの促進を目的とする「プラスチック資源循環促進法」。すでにこの法律に則って、プラスチックごみの削減と資源の有効活用に取り組んでいる企業は少なくない。
化学メーカーのカネカ(東京都港区)は、グループ会社であるカネカ食品株式会社(東京都新宿区)が販売している乳飲料「パン好きシリーズ」をリニューアルしたと、2022年3月1日に発表。このとき注目されたのが、200ミリリットルパックについている伸縮ストローで、新たに「脱プラスチック」を目的とした素材、Green Planetが使われていた。
Green Planet(R)は、カネカが独自に開発した100%バイオマス由来の原料を用いて、微生物により生産されたポリマー(PHBH)でできている。このストローは、自然界に存在する多くの微生物によって生分解され、最終的には二酸化炭素と水になる。土中だけでなく、これまで難しかった海水中での生分解を実現できたのはカネカの強みだそうだ。PHBHは、海水中や土壌中などの幅広い環境下で、優れた生分解性を有する素材という。
Green Planetは、さまざまな製品に加工することが可能で、すでにストローやレジ袋、カトラリー、食品容器の包装材などに使われており、今後も用途を広げていくことができる。
開発したカネカは、「土の中だけでなくこれまで難しかった海水中での生分解が可能という大きな特徴を持つGreen Planetを我々は奇跡のポリマーと考えている。また良好な耐熱性・耐加水分解性もあり幅広い用途での使用が期待できるため、マイクロプラスチック問題の解決をはじめ、地球環境保全に貢献していくことができる」と話している。
日米欧で使われるカネカのGreen Planet(R)
近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な社会問題となっている。生態系への影響が懸念されていることが、その背景にあるが、Green Planetは海水中で生分解する認証「OK Biodegradable MARINE」を取得しており、海洋汚染の低減に大いに貢献すると期待されている。
環境保全の取り組みで先行する海外で、Green Planetは米国では2018年3月に米国食品医薬品局(FDA)の食品接触物質に登録。19年には欧州委員会の食品接触材規則に掲載されたことで、フルーツ・ベジタブル袋などのドライフード用途や、ストローやコップ、カトラリーなどの全食品接触用途で使用可能となっており、カネカは今後、欧米はもちろん世界中での事業展開をさらに加速させるとしている。
国内でも、Green Planetはすでにさまざまな企業で採用されている。たとえば、コンビニ大手のファミリーマートの一部店舗では弁当や丼のスプーン、またセブン-イレブンでは「セブンカフェ」のストローに使われている。さらに伊藤園の「お~いお茶」の紙パックストローやJALグループの商社JALUXの空港店舗のショッピングバッグ、直近では東急ホテルズで採用された歯ブラシもそれだ。
脱プラスチックの対象製品には、フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、櫛、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ、ハンガー、衣料用カバーの12品目の「特定プラスチック使用製品」があがる。
こうした製品を扱う事業者は、総菜などを取り扱うスーパーやコンビニなど小売業や、飲食業や宿泊業、クリーニング業など多岐に亘る。飲食業では、持ち帰り専門店やデリバリー業者も対象とされる。経営体力があり、すぐにでも「脱プラ」を進められる大手企業だけでなく、今後は街の商店レベルにも広がることが想定される。
経済協力開発機構(OECD)の最新データでは、2019年の世界のプラスチック廃棄物は3億5300万トンと、2000年の2.2倍に達した。このうち日本は800万トン。一人当たりの廃棄量は米国に次ぐ世界2位だけに、まさに「ALL日本」で削減に取り組まなければ、なかなか減ってはいかない。まだまだカネカ生分解性バイオポリマー 「Green Planet(R)」の出番は増えていくはずだ。
(会社ウォッチ編集部)