話題の「令和4年版 男女共同参画白書」を読む(2)...シングルマザーは早くに結婚、出産、離婚傾向 母子家庭の「経済的苦境」も課題(鷲尾香一)

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   シングルマザーは高校卒までの学歴で、若くして結婚し、早くに離婚した女性に多いという特徴があることが、内閣府の調査で明らかになった。

   内閣府は2022年6月14日、「令和4年版 男女共同参画白書」と「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書」を発表した。

   この中で、「家族の姿の変化・人生の多様化」としてシングルマザーの状況について述べている。

   結婚に対する意識を取り上げた前回記事「話題の『令和4年版 男女共同参画白書』を読む(1)...『晩婚化』以上に『未婚化』への危惧 安心して結婚できる雇用環境、支援策を(鷲尾香一)」につづき、シングルマザーの状況も取り上げたい。

  • 「令和4年版 男女共同参画白書」のうち、シングルマザーの状況に注目(写真はイメージ)
    「令和4年版 男女共同参画白書」のうち、シングルマザーの状況に注目(写真はイメージ)
  • 「令和4年版 男女共同参画白書」のうち、シングルマザーの状況に注目(写真はイメージ)

シングルマザーになった年齢...30~34歳26.3%、25~29歳23.6%、35~39歳20.5%

   少子化が進む中、ひとり親世帯は増加している。1988年から2016年までの30年間に102.2万世帯(母子世帯数84.9万世帯、父子世帯数17.3万世帯)から141.9万世帯(母子世帯数123.2万世帯、父子世帯数18.7万世帯)に増加した。

   2016年のひとり親世帯における父子・母子世帯の割合は、母子世帯が86.8%、父子世帯が13.2%となっている=表1

   父子世帯と母子世帯の大きな違いは、父子世帯では55.6%が父子以外の同居人と生活しているのに対して、母子世帯では61.3%が母子のみで生活している点があげられる。

   シングルマザーという言葉が普通に使われるほど浸透しており、厳しい経済状況などさまざまな調査がある中で、その属性を詳細に調査したものは意外に少ない。そこで、今回はシングルマザーの属性に焦点を当てた。

   調査によると、「シングルマザーになった年齢」で、最も多かったは30~34歳の26.3%、次いで25~29歳の23.6%、35~39歳の20.5%の順となっている。

   つまり、34歳までにシングルマザーとなった女性が半数以上にのぼり、30代でシングルマザーとなった人が46.8%と半数近くを占めている=表2

   シングルマザーとシングルマザー以外の、各ターニングポイント(結婚、出産、離婚など)の平均年齢を比較する調査結果も出ている。

   それによると、まず、最初の結婚はシングルマザーが24.5歳、シングルマザー以外は26.8歳と、シングルマザーの方が約2年早い。

   次に、最初の子どもが生まれた年齢も同様に、シングルマザーが25.9歳、シングルマザー以外が28.1歳と約2年早い。

   さらに、離婚した年齢では、シングルマザーが33.4歳、シングルマザー以外が34.1歳と約1年早くなっている。

   つまり、シングルマザーは平均よりも早く結婚し、子どもを産み、離婚した傾向が強いということになる。

平均年間就労収入...父子家庭398万円、母子家庭200万円

   そこで、シングルマザーになった年齢別に最終学歴を見ると、「20代でなった人」は中学校・高校卒が圧倒的に多く、全体の73.8%を占めている。

   中学校・高校卒の比率は年齢が高くなるほど減少する傾向にあるものの、それでも「30代でなった人」では61.9%、「40代でなった人」でも56.1%と、それぞれ半数以上を占めている。高校卒業までの学歴の女性に、シングルマザーになる傾向が強いことがわかる=表3

   母子世帯は経済的に苦境に立たされるケースが多いが、シングルマザーになった年齢別に現在の就業状況を調べると、「20代でなった人」では正規雇用が31.9%、非正規雇用が35.5%とほぼ拮抗している。

   これに対して、意外なことに「30代でなった人」では正規29.5%、非正規42.4%。「40代でなった人」では正規31.6%、非正規46.9%と、非正規雇用が正規雇用を大きく上回っている=表4

   この非正規雇用者が多いという傾向が、母子家庭が経済的に苦境に立たされる一因になっている。

   父子家庭と母子家庭を比較すると、就業率は父子家庭が85.4%、母子家庭が81.8%とそれほど大きな差はないものの、就業状況では父子家庭の89.7%が正規雇用なのに対して、母子家庭では47.7%にとどまっている。

   これが、平均年間就労収入で父子家庭が398万円なのに対して、母子家庭が200万円と低額にとどまっている一因だ。加えて、養育費を受け取っている母子家庭はわずか24.3%しかないことも、経済面で苦境に立たされる大きな要因でもある。

   ひとり親という点では、父子家庭も母子家庭も同じはずだが、一般的に母子家庭の方が経済面で厳しい状況にあることを考えれば、シングルマザーの雇用の安定、正規雇用の促進などの施策を積極的に進めていく必要がある。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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