「笑った顔」には冷ややかな女将の謎
次に、「笑った顔」「怒った顔」「無表情の顔」の画像を見た際の2つの脳波成分を計測した。その結果、興味深い結果が出た。「おもてなし群」は「コントロール群」に比べ、P100成分の反応が全般的に大きかった。つまり、すばやく脳が反応したことになる。しかも、「怒った顔」に対しての反応が最も大きく、「無表情」への反応も比較的目立った=図表2参照。
ふつうは、世界共通の現象だが、「笑った顔」への反応が一番大きく、次いで「怒った顔」「無表情」の順に反応が大きくなるものなのだ。実際、今回の実験でも「コントロール群」は同様の結果となった。ところが、である。女将は「怒った顔」に最も大きく反応する一方、「笑った顔」にはさほど反応しなかった。研究グループによると、このような反応を示す集団は、世界の過去の研究では例をみないという。
従来、表情の読み取りには主に0.17秒後に出る「N170成分」が重要と考えられてきたが、女将は0.1秒後に出る「P100成分」ですばやく判断していたわけだ。しかも、さらに不思議なことは、遅れて出る「N170成分」がすぐに小さくなる傾向がみられたのだ。普通は、最初の「P100成分」が大きく出ると、「N170成分」も大きい状態が続くものなのだが......。